COVID-19(コロナウイルス疾患-19):薄気味悪いウイルス

1.薄気味悪い新型コロナウイルス

 2019年秋が深まった頃、中国武漢で突如として正体不明で不気味な疫病が人々を襲ってきたのが、ことの始まりだった。日本には、あまり情報がもたらされなかったこともあり、海を隔てた大陸で大事件が起こっているのに、日本では対岸の火事くらいにしか受けとめていなかった。日本で初めて感染が確認されたのは、年が明けてからであった。                           

その後、瞬く内に世界中がこの病に襲われ恐れおののき、大勢の人々が命を失うことになった。1年を経過し、その正体は少しずつ明らかになって来つつあるような側面もあるものの、一方ではこのウイルスによると思われる症状の種類が増え続け、今は百種類もあると言われるほど多岐に亘って全身を痛めつけている。このウイルスは音もなく忍び寄って来て、無症状や軽症であっても突如悪化して死に至ったり、後になって長期に亘る後遺症に襲われたりして苦しめられ続けている。こうして相変わらず正体不明で薄気味が悪く、ますます恐ろしくなっているウイルスであることに変わりはない。

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 快復後の免疫は三ヶ月も持たないというデーターがあるかと思えば、抗体は半年後も充分強く残っているというデーターも出てきた。ワクチンが出来たという湯気の立っているニュースは、単純に信じる事が出来れば朗報であるが、安全性や効果に関するデーターが詳細に示されていないので現時点では評価しがたい気がする。また、治療法に関しても様々なニュースが飛び交い、今以て明確になっていない。

 2.2020年11月24日現在のCOVID-19の拡大状況

covid19_2.jpg米ジョンズ・ホプキンス大学の発表をもとに作成した感染者数と死者数を表に示した。これほどまでにこのウイルスの被害が明らかになってもなお、「インフルエンザのようなもの、マスコミに踊らされるな。怖がらなくても良い」と主張する人々もいる。1年間に世界で六千万人の人々がこの疫病に苦しめられ、百四十万人が死んでいる事実を軽く扱って良いものだろうか。日本でもすでに死者は二千人を超え、そして被害は急速に拡大しつつある。決して侮ってよい代物ではないことは明らかであるが、詳細な検討は次の主題の論文に委ねる。

 3.疫病の聖書の記述

 旧約聖書に53箇所、新約聖書に1箇所、疫病について記載されている。それが細菌によるのか、あるいはウイルスによるのかということや、どのような病であるのかという詳細は記載されていないが、それは主による裁きであることと、非常な苦痛を与え、死に至る疫病であると記載されている。 

 最初に疫病の記載があるのは、エジプトで奴隷として酷使されていたヘブル人が、創造主である神を礼拝するために荒野に出かけたいと願い出た時、エジプトの王パロが許さなかった時の出来事である。頑固なパロを懲らしめるために神である主が次々と災いをもたらされたうちの一つが疫病であり、次のように書かれている。

 【主】はモーセに仰せられた。「あしたの朝早く、パロの前に立ち、彼に言え。ヘブル人の神、【主】はこう仰せられます。『わたしの民を行かせ、彼らをわたしに仕えさせよ。今度は、わたしは、あなたとあなたの家臣とあなたの民とに、わたしのすべての災害を送る。わたしのような者は地のどこにもいないことを、あなたに知らせるためである。わたしが今、手を伸ばして、あなたとあなたの民を疫病で打つなら、あなたは地から消し去られる。(出エジプト記9章13-15節) 

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 本来は伝染病全般を意味する英語のplagueは、ペストを意味するようになった。ペスト菌の感染によって起きるペスト・黒死病は致死率が60~90%に及び、最も怖れられた疫病である。十四世紀に世界的大流行となり、当時の世界人口四億五千万人の22%にあたる一億人が死亡したと推計されている。 

 4.人類と感染症との闘い・細菌性感染症

ペスト(黒死病):

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人類は様々な疫病に襲われ、苦しめられ、そして敗北し続けてきている。その一端を見てみよう。歴史的には世界的大流行が最初に記載されたのは、十四世紀のペストの流行だろう。人々は何が起こっているのか全く分からず薄気味の悪い疫病として恐れおののいた。ただ、触ったらうつる、近寄ったらうつるという事実をいち早く嗅ぎ取って患者を隔離することに腐心した。医者は何が何だか分からない闇の中にいて、治療する手立てもないままに、患者を隔離し、イラストのように鳥の(くちばし)のようなお面を被り、全身をすっぽり覆って患者に近づいた。

イラストの嘴医師を「おどろおどろしい」と小馬鹿にしたくなるだろうか?しかし、二十一世紀の現在、正体不明の薄気味悪く怖ろしい伝染病に直面して、全く同じことが起こっているのである。特に最初は、この新しい疫病がどのような病原体によるものか全く分からなかったので、ただひたすら恐れおののき、医療関係者は嘴医師と同様に防護服で身をすっぽりと覆って患者の救護に当たっている。嘴医師と同じように、肌は一切外気から遮断し、目もメガネで保護している。           

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少し付け加えると、COVID-19の初期の犠牲者は、ガラス越しにさえ家族との対面が許されず、火葬された骨が骨箱に収められて手渡されたという遺族にとっては「悲劇」「怒り・ウイルスへの?」、そして医療関係者の「醜態」ぶりであった。「死んだ」と言われたが本当に死んだのか、返された骨は愛する人の骨かどうかさえ分からない状態を、ただ信じて受け容れざるを得なかったのである。

本当は、すっぽりと体を覆い顔は見えるようにして棺に収め、対面させることは出来たはずである。それどころか、その後念のため棺をさらに覆ってから、普通に葬儀を行い、火葬することも出来たのである。確かに、死んでも個々の細胞は暫くは生きているので、細胞の中でウイルスは増え続けているだろう。しかし、死者は息をしていないので、ウイルスが外気に出てくることはない。それぐらい初歩的なことを、一般人ならいざ知らず、医師に何故分からなかったのだろう?見えない敵はそれくらい怖ろしかったのだろうけれど、あの怖れようは異常であった。 

 ペスト・黒死病は、十九世紀末に北里柴三郎などによって、原因菌が突き止められ、有効な感染防止対策が出来るようになった。また、テトラサイクリン、ストレプトマイシンなど様々な抗生剤が開発されて治療法が確立したので、ペストの猛威は以前ほどではなくなった。それでも、実は近年もペストの感染は続いており、怖ろしい伝染病であることに変わりはない。2004-2015年の約十一年間に、世界で56,734名が感染し、死亡者数は4,651名と報告されている。有効なワクチンはない。

 コレラ:

コレラ菌(1883年、コッホにより発見)を病原体とする経口感染症で、治療しなければ患者は数時間の内に死亡することもある。全世界の患者数は毎年数百万人であり、年間28,800-130,000人の死者を出している。水のような下痢便と嘔吐により水と電解質を失って尋常ではない脱水症状を起こし、低体温、血行障害、血圧低下、頻脈、筋肉の痙攣、虚脱を起こして死亡する。

 予防には、衛生改善と清潔な水が供給されることが必須であることから分かるように、先進国ではまれな病気である。日本からコレラが発生する地域に出かける時にはワクチン接種を行うことからワクチンの存在は広く知られているが、免疫獲得率は実は約50%に過ぎないのは驚きだろうか?

 結核:

結核菌(1882年、コッホにより発見)を病原体とする感染症で、世界でHIVの次に死者の多い感染症である。結核は空気感染すること、青白く痩せて死に至ることから、明治、大正、昭和時代中期(1868~1960)を通して忌み嫌われた感染症であった。ストレプトマイシンが結核に著効を発揮して結核患者が急速に減少し、日本では一時忘れられていた気配もあった。(忘れて良いほど結核患者が減っていたわけではなく、肺結核による死者も少なくはなかったにも拘わらず・・・。)

 ところがエイズ(後天性免疫不全症候群、HIV・ヒト免疫不全ウイルス感染による)を発症すると免疫機能が損なわれるので、他の感染症同様、結核を発症する人が急激に増加するようになった。結核は日本では2000年以降も毎年新たに約二万人発症し、世界保健機関の「結核中蔓延国」に該当している。厚生労働省によると、2016年は約1万8000人が新たに罹患し(人口10万人あたり13.9人)、約1900人が死亡した。

 ハンセン病:

 抗酸菌の一種である癩菌の寄生によって引き起こされる。身体の表面にさまざまな斑点や腫瘍ができ、皮膚の表面が厚かったり、薄かったり、硬かったり、柔らかかったりして均一でなくなり、あたかも何かの鱗のように粗くなったり、体が変形したり欠け落ちたりする。外観が著しく損なわれるため様々な差別を受けて、社会的に偏見、差別、排除をされてきた。

 癩菌の感染力は弱いので滅多に感染しないし、仮に感染しても抗生剤リファンピシンにより完治するので、今は恐ろしい病気ではない。近年、日本では新しい感染者は出ていないようである。

 聖書では、昔は癩病と翻訳されていたが、社会の差別や偏見を助長するものとして不適切であると批判があった。その後、様々な経緯を辿り、新改訳聖書では現在ヘブル語を音読して「ツァラアト」とカタカナ表示している。聖書の記述から想像すると、現在のハンセン病とは多少異なる病気のようであるので、敢えてハンセン病と翻訳されなかったのだろうが、ツァラアトではどういう病気か見当もつかない。学者諸氏の知恵ある翻訳を期待したい。

 なお、口語訳と新共同訳は、「重い皮膚病」と翻訳されており、聖書のこの病気の記述から判断すると、少なくともこの訳の方が分かりやすいと思う。英語訳NJKVでは「癩病」「癩」と、またTEVでは「恐ろしい皮膚病」と翻訳されている。

 5.人類と感染症との闘い・ウイルス

 このシリーズの主役、ウイルスに話題を転じよう。

ウイルスって何?

しばしば、細菌(バクテリア)と混線して語られる。違うような気もするし、同じかも知れないと思っている人もいて、又、どちらでも良いじゃないかと思っている人は大勢いる。何故、そんな小さなことを気にするのかと、秘かに思っている人は多いだろう。だが、小さなことではないのである。

タバコモザイクウイルス(TMV):

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タバ

コモザイク病は、タバコモザイクウイルスによる植物の感染症で、タバコなどの葉にモザイク状の斑点が出来て、葉の成長が悪くなる。タバコモザイクウイルスは、1892年、最初に発見されたウイルスである。

・1本鎖+鎖型RNAウイルス。

・顕微鏡では見えない。

・ウイルスでありながら結晶化する。

 ウイルスって何?:

最初の重要な命題に戻ろう。

一般的な生物とウイルスとの違いを表にまとめる。

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*DNA または RNAを遺伝情報として持っているが、生物の細胞の助けがないとこれらの遺伝情報は機能を発揮しない。

*他生物の細胞を利用して自己を複製させる極微小な感染性の構造体で、タンパク質の殻とその内部の核酸からなる。

*感染することで宿主の恒常性に影響を及ぼし、病原体として振る舞うことがある。

ウイルスはウイルスであって、生物ではない。従って、細菌性感染症とウイルス性感染症とは予防法も基本的に異なるし、感染したときの対処法も異なるのである。

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人の感染症、ウイルス性:

ウイルス性の感染症は数多くあるが、参考にするためにいくつかを表にして示す。

*天然痘は、有名なジェンナーによって最初にワクチンが開発された感染症であり、人々が恐れおののいた天然痘が、撲滅された唯一の感染症でもある。

 *はしか・麻疹のワクチンは長く使われているが、近年成人で流行し始めており、成人が掛かると重症になることが多く、様々な問題を起こしている。

 *エイズ:HIVは免疫細胞に感染するために、免疫機能が損なわれて複雑な問題を起こしていることはよく知られている。 

 *エボラ出血熱は感染すると重症化し、死亡率も高く怖れられている。ワクチンは出来ていない。

  *インフルエンザは季節性の感染症で、毎年少しずつ変異したウイルスが襲ってくるので、それに対応した異なったワクチンが作られ、毎年接種されるのである。ワクチンの副反応は、時として無視できないほどの苦しみを与える。又、ワクチンを打ったのに効果がなく、掛かってしまう人々がいるが、そもそもワクチンの免疫獲得率はそんなに高くはなく、100%からはほど遠い数値なのである。

 *SARSは、今流行しているCOVID-19と同じくコロナウイルスであるが、有効なワクチンは出来ていない。ワクチンだと思ったものは、むしろ悪化させるものであった。

 *MERSも、ワクチンは出来ていない。

 *新型コロナウイルスの感染によって発症するCOVID-19については、次の項で詳細に記載する。

 6.おわりに

地球、人類の救いのためにイエス・キリストが再臨なさることは決まっているが、それがいつのことかは誰にも分からない。その時には、様々な前兆が現れると聖書に預言されており、その前兆の一つとして疫病が蔓延すると、次のように書かれている。

 大地震があり、方々に疫病やききんが起こり、恐ろしいことや天からのすさまじい前兆が現れます(ルカの福音書 21章11節)。

  しかし、今回のCOVID-19の大流行は、御再臨の予兆ではない。今回の流行は今までもあった大流行と同じたぐいのもので、今までと同じように、人類の堕落、背信への罰として与えておられることは確かだろう。

 神は、ご自身が創造なさった人類にあらゆる方法で恵みを与え、祝福してくださっているのに、人々がその創造主に背いて悪を成すと、様々な罰を与えて悔い改めるのを待っておられるのである。

 【主】は、あなたのなすすべての手のわざに、のろいと恐慌と懲らしめとを送り、ついにあなたは根絶やしにされて、すみやかに滅びてしまう。これはわたしを捨てて、あなたが悪を行ったからである。【主】は、疫病をあなたの身にまといつかせ、ついには、あなたが、入って行って、所有しようとしている地から、あなたを絶滅される。(申命記28章20,21節)

  最初に書いたように、旧約聖書には神が下される裁きの一つとして53箇所に疫病が書かれている。しかし、それは悪をした人々が悔い改めることを要求しておられるということである。そして、人類が体験する様々な試練を神はすべてご存じであり、今回の世界中が苦しんでいるCOVID-19の大流行に関しても、愛を込めて見ていて救いの手を差し伸べておられる。

 あなたがたの会った試練はみな人の知らないものではありません。神は真実な方ですから、あなたがたを、耐えられないほどの試練に会わせることはなさいません。むしろ、耐えられるように、試練とともに脱出の道も備えてくださいます。(第一コリント書 10章13節)