3.大気の組成

ついで神は「大空よ。水の間にあれ。水と水との間に区別があるように。」と仰せられた。こうして神は、大空を造り、大空の下にある水と、大空の上にある水とを区別された。するとそのようになった。神は、その大空を天と名づけられた。こうして夕があり、朝があった。第二日。(創世記1章6~8節)

 まず、地球を水の惑星として創造し、その水を上の水と下の水に分けられた創造主は、その水の間に存在するものとして、大空すなわち大気を創造された。この大気・空気とはどのようなものであったのだろう。創造を考える場合、二日目の大気の創造に余り重きを置かれないことがしばしば起こるのは、大気が地球の存在を、ひいては人間、動物、そして植物を支える重要なものであることを忘れているせいかも知れない。この項では、この大気について、少し詳細に見つめてみることにする。

[Ⅰ]一気に創造され、地球を取り囲んだ大気

 いるかいないか分からない静かな人のことを「空気のような存在」という表現をすることがあるが、実際、私たちは見えない空気の存在を意識することはあまりなく、まるであってもなくても構わないかのような錯覚に陥っているかも知れない。そして、無くなった時に初めてどんなに大切なものかを認識する。この点に関する詳細は後に記述するが、必須で重要な気体を一定の然るべき構成比率で含んでいる大気が瞬時にして創造され、地球をすっぽりと取り囲んだことが記述されている(創世記1章6-8節)。

taiki_sosei_1.jpg 地球を遠く離れて宇宙に出ると空気がなくなり、宇宙遊泳のためには酸素ボンベが必要であるのに、何故地上では空気が充分に存在し、どんな不自由もなく生きて動けるのか、この恵みを人々は不思議とも思わずに受け容れている。このようにして、安定した大気を地球の周りに保持することが出来るのは、地球が充分な質量を持っていて、大気を捉えておくだけの適正な重力を持って創造されたためである。この重力により大気は宇宙の彼方へ飛び散らないで、①人が生きるための最適な大気圧、及び、②窒素・酸素・炭酸ガス等が相互に最高のバランスを持って創造され、維持されるように、諸々の物理法則を創造主が最初に設定なさったことをしっかり認識する必要がある。

 「もし、地球の直径が現在の12,800kmでなく、その10%小さい11,500kmだったなら、大気圏の減少によって地球全体が雪や氷の荒野と化していただろう」とカリフォルニア大学のD・ギッシュ博士が述べている。地球が10%小さくなるだけで、この地球上に生物は生息出来なくなるというのである。地球の大きさや質量だけを考えても、創造者の底知れない偉大な叡智とご計画が伺われるであろう。

「あなたは知っているか。だれがその大きさを定め、だれが測りなわをその上に張ったかを」(ヨブ記38章5節)

 繰り返して強調しておくべきことは、地球の大きさと質量と重力が適正な比率で創造され、そしてそれを維持するための適正な大気が地球を取り囲むように、全てが統率された状態で創られたので、この整えられた秩序ある存在が可能になったということである。

[Ⅱ]大気の組成

 現在大気中には、化合物になっていない気体の酸素が約21%含まれていて、酸素呼吸をする生物を支えている。酸素呼吸をする生物とは、もちろん人を始め、数多くの動物たちであり、呼吸をするためには一定比率の酸素は必須であり、それ無しに生きることはできない。・・・呼吸を語る時、しばしば植物が忘れられるが、植物ももちろん呼吸をする。

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 表と図に示したように、現在の大気は窒素(78%、青)と酸素(21%、小豆色)で99%を占め、それ以外はアルゴン0.93%、二酸化炭素(炭酸ガス)0.03%などが主な構成成分である。地球の大気の成分で最も変動するのは水蒸気だが、それを除いた乾燥空気の成分は、場所・季節・時刻ではほとんど変化しない。ただし、(*)を付けた二酸化炭素(炭酸ガス)は、生物・産業活動・光化学による合成・分解により、僅かだが変動する。

 これら以外には、ごく微量の水蒸気、ネオン、水素など12種類以上の気体が存在している。どのような超微量ガスが大気中に存在しているかについて、及び主要な成分元素がガス以外の状態でどのような役割をしているかについては多少の情報を後ろの専門的な部分に記すが、ここでは気体としての役割のみを記述することにする。

[Ⅲ]酸素

 2011年3月11日の東北地方の地震と津波の大災害、そして原発の崩落事件において、そして2014年4月の韓国のフェリーの事故・事件において、救助活動で常に問題にされることの一つは呼吸できる充分な空間・・・すなわち酸素量・・・が確保できているかどうかである。酸素がなければ命は維持出来ないということは、子どもでも知っている事実である。
 高山に登ると気圧が低くなり、したがって酸素の量も少なくなって高山病に罹るので、酸素ボンベを携帯する必要があるのも周知のことである。

 酸素が不足すれば生命は維持できないのならば、どうして酸素が100%である大気を創造されなかったのであろうか? その方が効率的ではないかと、愚問を提出する人は多分いないだろうが、それでも酸素が21%である必要があるのであろうかと、ふと疑問に思う人もいるかも知れない。

 しかし、酸素の比率(酸素分圧という)が高すぎても生命活動に支障を生じ、大きな危険が及ぶ。随分昔のことであるが、未熟児を保育器に入れて保護する時に、保育器内の酸素分圧を高くしたところ、命は助かったが失明してしまったという事故が発生した。
 酸素は反応性の高い元素であるから、様々な反応をするので、適正な比率と量で、また適正な形で存在しなければならないのであり、酸素分圧は21%前後でなければならないのである。

[Ⅳ]窒素

図にも書き込んであるように、通常の生活圏では空気の80%近くがこの窒素であり、色もにおいもなく、目には見えない存在である。気体の状態ではどのような反応もせず(不活性という)、したがって無毒である。

 このように完全に反応性を持たない、すなわち良いことも悪いことも積極的には行わない窒素ガスが何故大気中に、しかもこれほど大量に存在する必要があったのだろうか? 人間の科学は正しい答えを得ていないかも知れないが、しかし、ある程度は理解しているようである。生物に無害な窒素やアルゴンのような気体が、相当高濃度に大気中に含まれている必要があるのである。

 先に書いたように、適正な質量と重力を持った地球と、それを維持するために適正な大気が地球を取り囲み、全てが統率された状態で創られたのである。これだけの大気圧が必要であるということ、そして適正な酸素分圧が人間や動物の命を支えているということなのであり、その酸素分圧が約21%なのである。

taiki_sosei_3.jpg このように不活性である性質を利用して、酸素に触れると性質が劣化するものを窒素ガス充填して酸化を防ぐために使われている。例えば海苔や鰹節などは空気中で極めて短時間に劣化しやすく、直ぐに香りが悪くなり、続けて味が落ちる。したがって、これら劣化しやすい物質を袋詰めする時に、空気を抜いて反応性のない窒素ガスと入れ替えてある。スーパーの売り場に並んでいる鰹節の袋がパンパンに膨らんでいるのは、窒素ガスが充填されているからである。袋の裏面を確認してみると、「不活性ガス充填」「窒素ガス充填」などと記載してあるのに気が付くだろう。ちなみに袋を開けると、瞬時に空気が入るので、その後は空気を抜いて保存すると、多少とも劣化を遅らせることが出来る。      

[Ⅴ]二酸化炭素(炭酸ガス)

 グラフにすると見えないほどであるが、微量の炭酸ガスが大気中には存在しており、重要な役割を担っている。緑色植物は、動物に食物と酸素を供給するという重要な働きに於いて炭酸ガスが必須であり、表の下に記述したように、その数値に多少の変動幅はあるが、常にごく微量存在している。

 近年、炭酸ガス濃度が高くなって地球温暖化を招き、環境破壊の一大要因になっているとして世界中が大騒ぎをしている。これは本当なのだろうか? 大気中の炭酸ガス濃度はこんなに低いのである。真面目に環境問題を考えている学者たちは、多くのデーターを示して、そうではないと結論を出している。この問題に関しては、地球温暖化問題など全く別の項目で取り上げることにする。

 動物は食物(生きていくためのエネルギー)と、呼吸(同様にエネルギー供給が最終的な目的である)を、緑色植物に依存している。これについては、創造3日目、植物の創造の項で詳細に記述する。

 緑色植物は葉緑体という緑色の特別な装置を持っており、炭酸ガスを使って光のエネルギーをデンプンという有機エネルギーに変換すると同時に、酸素を合成し放出して動物の呼吸を支えている。この全工程を光合成という。

 植物自身も呼吸をするので当然酸素を使うのであるが、光の存在下、光合成を行っている時には使う量より遙かに大量の酸素を合成するので、その酸素を外気に放出するのである。したがって、夜間やあるいは光が当たらない環境下では、植物であっても動物同様、酸素を使うだけであり、空気清浄化の役割は果たせない。室内に植物を置く時には、適切に光が当たるように配慮しなければならない。

 創造された地球を取り囲んだ大気、そして今もなお地球を取り囲んでいる大気の概略を記述した。大きな関心を寄せている方々のために、少し詳細な情報を下に記述する。

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専門的な考察

[Ⅵ]超微量に存在する大気の組成
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 上に記述した4種の大気の組成、窒素、酸素、アルゴンそして二酸化炭素の合計は、99.996%である。すなわち残りは超微量で0.004%であるが、それがどのような気体で構成されているかを表に示す。いずれにしても超微量であるから、その点を含んで理解して貰いたい。

 ヘリウム(α線)は、放射性同位元素が崩壊する時に大気中に放出されるガスで、大気中に存在するヘリウム量は、地球の年齢を推測するのに有効な方法である。メタンガスは火を付けると燃えることはよく知られており、炭酸ガスと水になる。水素も同様に酸素と結合して燃えるガスであるが、大量に存在する場合には、火を付けると爆発的に燃えるので危険である。

 一酸化炭素、アンモニア、二酸化硫黄などは大量に存在すると危険な毒物であるが、存在しているのは無視できるほど超微量であるので、上記ガス同様、普通の生活環境では危険はない。

[Ⅶ]二酸化炭素の別の側面

(1)二酸化炭素の危険性
 二酸化炭素ガス(CO2)は、一酸化炭素(CO)と異なり全く毒性はないが、非常に大量に存在すると空気より重いので下に沈み、地面(床面)をあたかも雲か煙のように覆って這って移動していく。したがって地面近くに寝そべっていると、酸素不足で窒息する危険性がある。         
  
 実際、1986年、西アフリカのナイオス村で1,200名の人々が、這ってきた炭酸ガスの雲に襲われて犠牲になるという事件が起こった。地中で発生した大量の二酸化炭素がナイオス湖を伝って空中に出て来て、炭酸ガスの雲のようになって地上を這ってナイオス村の人々を襲ったのである。(Ferl & Wallace, The Realm of Life, p 24, 「ナイオス湖の死の雲」)

(2)二酸化炭素の相変化
taiki_sosei_5.jpg ドライアイスは二酸化炭素の固化したものであることはよく知られている。この頃はスーパーで冷凍食品を購入するとドライアイスをサービスで提供してくれ、帰宅してからそのドライアイスを流し台に出すとチリチリと音を立てたり、白い煙をはいて気化したりするのを見たことがあるだろう。
 また、遺体を棺に納めるのに、この頃は夏でなくてもドライアイスを詰め込むようである。                                     
 二酸化炭素は常温では気体であるが、マイナス80℃以下で固体となり、ドライアイスと呼ばれる。これを室温に置くと、よく観察されるように液体を経由しないで、白い煙を出していきなり気体になる。この現象を昇華と言う。

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 ドライアイスを素手で触れると低温火傷をするので、決して素手で触ってはならない。また、ペットボトル、ジャー、瓶などにドライアイスを入れて蓋をしておくと、気体になって圧力が膨大になり、破裂したりするので危険であるので、密閉容器には入れてはならない。さらに、大量のドライアイスを狭い密閉した車内に放置すると、車内の空気中に二酸化炭素が充満して、上の事件で分かるように、小規模な類似事件が発生する危険性がある。

(3)生物の有機物(炭素化合物)の原料・炭酸ガス
 上記、[Ⅴ]二酸化炭素(炭酸ガス)に記述したように、生物の構成成分・有機物の最初の化合物は、炭酸ガスと水から緑色の細胞内小器官・葉緑体の中で光のエネルギーを用いて光合成によって作られたブドウ糖である。動物が利用できる栄養の出発点は、常に植物であり、植物が合成するブドウ糖である。すなわち、生物構成成分の出発点はブドウ糖であり、そこから米、麦などの穀物、ジャガイモやサツマイモなどの芋類などのデンプンへと変換して動物に栄養を供給する。これは、植物を全く食べないとされている肉食動物であっても同じことである。ブドウ糖から炭素、水素、酸素を構成元素とするデンプンのみならず、窒素や他の元素を含むタンパク質、脂質、核酸など全ての生体成分はここを出発点としている。

[Ⅷ]窒素

(1)窒素ガス及び液体窒素
taiki_sosei_6.jpg 窒素ガスは、写真(右)に示すようにボンベに密封して保管されている。実験室などでは、酸素を嫌う反応の場合などに窒素ガスが用いられる。
 温度を下げると77 K, ?196 ℃(液体窒素の沸点)で液体になり、超低温の液体(写真(右))が得られる。試験管に凍結したいものを入れてこの液化窒素に入れると、瞬く中に凍結させることが出来るので不安定なタンパク質溶液を凍結保存するために、しばしば用いられる。 

(2)有機窒素化合物:有機物中に結合した窒素 

 大気中の80%近くを占める窒素ガスは不活性であり、どんなものとも反応しないことを説明してきた。しかし、アンモニアを始め、数多くの窒素化合物は存在している。それは、炭酸ガスや酸素ガスが有機物に変換される巧みなシステムが存在するように、窒素ガスも微生物のメカニズムによって有機物に変換されるのである。

 重要な窒素化合物としてよく知られているのはタンパク質、そして核酸である。これら生体高分子は生命の根源を担うものであり、これらなくして生命はないことは自明のことであることを知らない人はいないだろう。それ以外にも、脂質やホルモンその他の生体物質中も炭素、酸素、水素、窒素などが構成成分として存在している。

[Ⅸ]進化論者の説

 約130億年前に偶然に宇宙が生じ、その後偶然の連続で今の宇宙になったと、進化を信じている人々の考えを紹介しておこう。
 多くの進化論者たちは、原始大気には酸素は含まれておらず、地球上に植物が出現し光合成を行うようになって、初めて多量に酸素が生じたと考えているようである。しかし、この説は論理が破綻する様々な矛盾を抱えている。

 ①植物も呼吸をしており、酸素が必要であることを上に述べた。したがって酸素分圧ゼロの段階から始まると、植物も初めは一方的に酸素を消費するだけであり、生育しないのである。生育して葉緑体が形成された後で、光合成を行って酸素を合成する成熟した植物までに育つのである。狭い空間の閉鎖系に於いてさえ、まず始めに酸素が必要なのである。成熟して葉緑体という複雑な細胞内器官が生じた後なら、光合成を行う限りにおいて呼吸に支障は生じないが、酸素のない条件下で始まると、そこまで到達できないのである。

 ②広い空間に於いては、仮に光合成が出来るとしても、生じた酸素が大気中に発散する解放系であり、無酸素の状態で始まれば、植物の呼吸を支えるだけの酸素濃度は確保出来ない。

 ③酸素分圧ゼロから出発して植物が酸素を供給出来たと仮にしても・・・あり得ない仮定であるが・・・、最初の大気組成は今日と大きく異なっていたはずである。必要な濃度にまで酸素分圧が高まる前に、動物は血液・心臓・肺など主要臓器においてガス分圧の異常を起こし、生きることは出来なかっただろう。

 無酸素状態では人間は一瞬たりとも生きてはいけないことは誰でも知っているが、それは人間に限ったことではない。酸素呼吸をする動物も酸素がないと命はない。このような大気に護られていのちが維持されるように造られているのである。

 ④水中に生きる動物は水に溶けている酸素を呼吸するが、酸素濃度の上昇は大気中と水中との間に相当の時差があったはずである。海水に対する酸素の溶解度からすると、大気中の酸素分圧は約0.02気圧以上必要であると計算されている。
 光合成を行う海生植物は存在するにはするが、大気にも水中にも酸素が存在しない状態で仮に生命が始まったとしても、陸でも海でも生き続けることは不可能だったと考えられる。

 では、仮に初めから酸素が存在して、順次進化してきたと考えるには別の深刻な問題がある。生命に必須のタンパク質は酸素によって即座に分解されるので、万が一にもタンパク質を合成する過程に辿り着いたとしても、次の瞬間には分解されてしまっていることになるのである。長い時間を掛けて生命がタンパク質から進化するなどということは不可能なのである。

[Ⅹ]結語:二日目の終わり

 植物が大気中の炭酸ガスを使って光合成により有機エネルギーを生み出し、人間を始め動物が豊かに生きることが出来るようにと、生命を維持するために酸素も含めすべての気体を最善の比率に整えて完璧な組成比を持つ大気圏が初めからこの地球に準備されたのである。
 すなわち、酸素、窒素、二酸化炭素など各気体の分圧が整えられた状態でこそ、生命は無事に維持され続けるのであり、初めから生命体に必要な21%の酸素分子が、大気中に存在するようにして創造されたのである。
 
 下の模式図は、必ずしも正しくはないが、造られた地球が護りの中にあったことを示している。創造された時点で地球は陸地が一つ、海が一つであり今の地球を模して描いた図は正しくない。また、有害な宇宙線が存在したかどうかは不明である。しかし、全てを整えて、人が豊かに生きる事が出来るように、創造の4日目までに順番に整えられたのである。

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参考文献:「創造」vol 1. No.1(1997), vol. 3, No.3(1999)、「創世記の記録」ヘンリー・M・モリス著(宇佐神正海訳)、創造科学研究会(1992);「だれが宇宙を創ったか」ロバート・ジャストロウ著、講談社(1992)