16.人間である証詞はDNAのどこに、どのように?

 前回まで、進化仮説 ( 論) について様々な視点に立って論点を整理し学んできたので、進化仮説には証拠がなく崩壊しているという結論に納得されたことだろう。進化が正しいというギヤが多くの日本人の心に入り、どうやら見事に錆び付いてしまっているらしく、押しても引いても突いてもギヤの切り替えは容易ではないようである。そして、科学の、あるいは技術の進歩に伴って新しい知見、新しい技術を駆使して、益々頑固に「進化」というギヤに固定しようとする力が働いている。

聖書に書かれている創造について学びを始める前に、「進化仮説」の分子生物学的「証拠」として主張されているヒトとチンパンジーのゲノムについて考察してみよう。

[ Ⅰ ] 進化仮説がかぎ爪を食い込ませた土台

日本人古来の宗教心

 長い歴史の中で培われてきた日本人の体臭は「全てを呑み込む宗教心」である。世界に類のない万世一系の天皇制に支えられ、何ごとがあろうとも揺るがない神道は実に三〇四以上の神道諸派を擁して、他の宗教と不思議な調和のもとに一体化している。仏教は最初の迫害を乗り越え、流れの中で神道と和睦し二つで一つ、一つで二つという神仏混淆の関係を確立・維持してきた。儒教やその他諸々の土着の民俗信仰が融和し、日本人の心の深い奥底に染み込んでいる。

hazah_16_1.jpg 何でも拝む宗教的無節操の土台に、古くからの道教・地蔵尊・陰陽道等が根を張り、新宗教の天理教・金光教、そして諸宗教の開祖や指導者、有名人を誰でも拝む対象にする宗教が根付くことが出来た。また、人形や石ころ・木切れ・金属片等々、あらゆるものを拝む対象にして次々小さな宗教が雨後の竹の子どころの騒ぎではない八百万の神々を祭り上げ、今も拝む対象をどんどん生産している。このような日本人の体臭が築かれた要因は、心の奥深い所に「創造主を否定する進化思想」が初めからがっしりと食い込んでいたことである。このような土壌に多種多様な宗教が迷い込んできても、それらに栄養を与え育てるのである。軟弱に見える土台でありながら決して崩れない粘着力を持った国民性は、進化思想・仮説を育てて進化論として受け容れ、溶け込ませ、渾然一体となったのである。

[ Ⅱ ] ゲノムとは?

 ( 一)細胞内小器官と遺伝情報
 細胞は多様な機能を発揮する特別な生体膜・二重層膜に包まれており、細胞内を満たしている細胞液には様々な物質が溶け込み、また特別な役割を果たしている様々な小器官が備えられている。これら小器官の内、遺伝情報を携えているのは、もちろん細胞核であるが、ミトコンドリアも少しDNAを持っている。

( 二)染色体・DNA・ゲノム
 細胞分裂の時にDNAはタンパク質と共に畳まれて、特異的な形・大きさの染色体を形成する。染色体として巻き取られているDNA、ゲノムは「生物をその生物たらしめるのに必須の遺伝情報を持っている染色体セット」であり、相同染色体の1つずつと、性染色体とで構成され、人では約三十億塩基対である。

 染色体として通常紹介されているカリオタイプでは、それぞれの染色体が対になって存在しているので、染色体はヒトの場合、二十二対とXとYの二本の性染色体とで、合計四十六本、約六十億の塩基対である。

hazah_16_2_2.jpg

( 三)塩基対とは?
hazah_16_3.jpg ゲノム(DNA)を構成している化学的単位は、アデニン、グアニン、チミン、シトシンという四種類の化合物である。これらは塩基という共通の化学的性質を持っているが、構造は少しずつ異なっており、図に示しているように定まった相手とペアになって結合してDNAの骨組みの鎖に繋がって長いDNA鎖を作り上げている。こうして、どの塩基が、どのような順番で繋がっているか、すなわち塩基配列がどのようなタンパク質を合成するための情報なのかが定まるのである。このタンパク質を合成する情報を形成している塩基配列の部分が、すなわち「遺伝子」である。

( 四)塩基対の配列で判明すること
 「蛙の子は蛙」という諺にまでなっているように、人類は大昔から「親から子へ、子から孫へと」本質的な性質が受け継がれていくことを知っていた。それがメンデルに始まる遺伝学として発展し、そして遂に、蛙の子は蛙に、人の子は人になる重要な遺伝情報は、すべて「ゲノムに織り込まれているはずである」と確信するに至る数々の科学的証拠を得た。

 ゲノム解析が終了したら、必ずや進化の決定的証拠が得られるであろうと、進化を信じる人々は期待していた。進化を信じない人も、人が人であることの科学的な証拠がゲノムにどのように織り込まれているのか、それが判明するという期待に胸を膨らませた。技術の進歩に伴ってゲノム分析が簡単で迅速にできるようになり、研究者はヒトのゲノム分析に真っ先に挑戦した。科学研究の常識的順序としては、これはかなり異例のことである。通常は、単純な小さな生物から始めて、次第に複雑な生物へと進めていくのが常套手段なのである。しかし、ゲノム分析では真っ先にヒトのゲノムに取りかかったのである。

[ Ⅲ ] 生物の決定的本質を定める遺伝情報は何処に?

hazah_16_4.jpg( 一)ヒトとチンパンジーのゲノム比較
 ヒトとチンパンジーのゲノムの相違は僅か一・二三%で、九八・七七%同一だという結果が出た時に、進化が証明されたと華々しく宣伝され、進化論者は大喜びした。しかし、この一・二三 %の違いが踏み越えられない差違を生み出しているのが明らかなのは言うまでもない。高度の科学知識や技術を駆使して調べても、その数字はどんな意味も持ち得ず、ただ空しい。自分がチンパンジーと九九%近く同じだと思う人はまさかいないだろう。

そして、人として極めて素直な直感を裏付ける結果はすぐに明らかになった。分析値を表に示したが、ヒトとチンパンジーのゲノムの違いを決定付けているのは実は、①DNAの変異の「数」ではなく「位置」であること、② 六八〇〇〇箇所に欠落か挿入があるが、それはタンパク質合成に直接関与している遺伝子ではなく、遺伝子以外の非コードDNA領域に多く見られること、③ そしてヒト特異的な配列やチンパンジー特異的な配列が存在していることが明らかになった。聖書に次のように書かれている通りである。

人がもし、何かを知っていると思ったら、その人はまだ知らなければならないほどのことも知ってはいないのです。(第一コリント八章二節 )


hazah_16_5_1.jpg ヒトとチンパンジーのゲノムを次のページに並べて示す。ゲノムを比べるまでもなく、実は様々な科学的証拠は、人とチンパンジーとの間には越えられない断絶があることが証明されている。(CR誌31号「人類の起源」)

( 二)ヒトゲノムの詳細な分析
 先に説明したように科学者はゲノム分析を進めて、この塩基配列はこのタンパク質、例えばヘモグロビン、こちらの配列はインシュリン......と、順次それぞれのタンパク質合成のための塩基配列・遺伝子であると決定した。そして、どのタンパク質にも当てはまらない塩基配列部分は全て、ジャンク・ゴミと決めつけた。

 分析が終わりに近付くに従って、科学者はハタと戸惑った!? 「私たちのゲノムはゴミだらけ?」なのである。さらに重要なことは、どの部分にどのタンパク質を合成する情報が組み込まれているかということだけしか何も判明しなかったことである。人である決定的な本質を決める情報が、ゲノムのどの部分に、どのようにして組み込まれているのかという、一番大切な情報は全く解らなかったのである。

hazah_16_5_2.jpg

 分析が全て終了してから、捨てたゴミを拾い集めて、分析値を検討して図の真ん中に示したように構造的な特徴によって分類しなおしたりした。しかし、真ん中の図でも、さらに詳細に分類した右端の図でも、化学構造の特徴を詳細に分類しただけで、それ以上には進展していないようであり、つまり人であるという内容については目下いっさい主から開示されていないのである。

hazah_16_6.jpg 創造主が全てを創造なさったのであり、進化はあり得ないことをはじめに宣言しておられるのである。高度の技術を駆使して分析しても、進化の前提に立って研究を進めているので、ゴミだらけのゲノムに辿り着いてしまったのである。

 知識もないのに、言葉だけを並べ立て、創造主のご計画を曲げている者はだれか。わたしがこの世界を創造した時、あなたはどこにいたのか。分っていたら、答えてみよ。(ヨブ記 三八・2〜4、創造主訳)

[ Ⅳ ] 結語

hazah_16_7.jpg 主の壮大な知恵と愛によって創造された生命、分けても神の御姿を映して創造された人の本質について、主はいつ、どのように開示して下さるのか、人類は知らない。主が適切な時に、最善の道を指し示して下さるのを楽しみに待ちたい。

 人の知恵をもってしては,宇宙の謎を解くことはできない。(伝道者一章十五節、創造主訳)「わたしは、あなたがたに悟りを与え、行くべき道を教えよう。わたしはあなたがたに目を留めて、助言を与えよう(詩篇三十二篇八節)」

 

 


このシリーズは、マルコーシュ・パブリケーションの発行するキリスト教月刊誌「ハーザー」で2014年2月から連載した内容を転載したものです