23.地球を中枢に据えて創造された宇宙 

 あなたの指のわざである天を見、あなたが整えられた月や星を見ますのに、人とは、何者なのでしょう。あなたがこれを心に留められるとは。人の子とは、何者なのでしょう。あなたがこれを顧みられるとは。(詩篇八章三節、四節)

 [序] 月に兎はいなかった!

 「名月をとってくれろと泣く子かな」と謳った小林一茶にとって、月は柔らかい光を投げかける遠い存在であり、人類がその月に足を踏み入れるなどとは想像さえしなかっただろう。兎が餅つきをしていると詩的に楽しんでいた時代も、宇宙服で体をがんじがらめに防護して、おっかなびっくり月面に降り立ち兎はいなかったことを確認して、月の岩石を後生大事に地球に持ち帰った今も、月は地球の周囲を定められた通りに規則正しく周回している。そして、昔も今も変わりなく、夜の闇に優しい光を降り注ぎ、地球の海や大気を整え、地球に住む生命体を、特に私たち人を護る役目を果たしている。

 創造の四日目、地球を護るための宇宙環境の仕上げについて、前号に続けて、もう少しだけ詳細に分け入ることにする。月がどのように重要な役割を担っているか、そして、月の遙か遠くにある惑星についても、人類が僅かに学んだことの、その又僅かな一端を少し学んで楽しむことにする。

 [Ⅰ] 地球の大切な衛星;月

 (一) 月と地球の季節感・気候風土

  主は季節のために月を造られました。太陽はその沈む所を知っています。あなたがやみを定められると、夜になります。夜には、あらゆる森の獣が動きます。(詩一〇四:19, 20)

 イエス・キリストがおっしゃったように、人は主が定められた自然の営みを悟ることが出来、それに生活を合わせる術を知っている(マタイ16:2,3;ルカ12:54,55)。「知っていたと言うべきかも知れない」と思うのは、昨今、地球を取り巻く自然環境が乱れきり、又人々も自意識過剰のせいで自然を無視し、ねじ曲げようとする行動が多くなっている。

  神戸に住んでいた子どもの頃、夏は毎日海へ泳ぎに行った。「お盆が過ぎた後は、泳ぎに行ってはいけない」と教えられた。お盆が過ぎた後は、海の表面は穏やかでも、底まで引っ掻き回すほどの大きなエネルギーを蓄えた波で、相当の泳ぎ達者でも波に浚われる危険性があり「土用波」と言って恐れられたのである。アブラゼミやクマゼミが耳をつんざくほど鳴いた夏も終わり、ツクツクボウシが秋の訪れの近いことをさわやかに教えてくれるのも、その頃である。ところが、昨年も今年も、ツクツクボウシの声を聞かなかった。筆者の住んでいる周辺だけなのか、近畿地方だけなのか・・・知らない。台風は「二百十日」「二百二十日」の風物詩だと思っていたのが、このところ梅雨の時期から秋が深まった後まで台風がやってくる。

hazah_23_.jpg神は北を虚空に張り、地を何もない上に掛けられる (ヨブ記二六:7) 。

 人類は地球を離れて宇宙に飛び出し、支える物のない空間に美しい地球がポッカリと浮かんでいる姿を月から見て、聖書に書かれている通りであることを目で確認した。写真は月から見た地球の姿である。地球を眺めて主の偉大さを称える者と、宇宙には神はいなかったとうそぶく愚か者がいる。

            **************

 初めて宇宙に飛び立ったガガーリンに関して、次のような逸話がある。ロシア正教のモスクワ総主教の質問に、ガガーリンが「神の姿は見えなかった」と返事をすると、総主教はそれを他所で言ってはならないと命じた。その後、フルシチョフに「神の姿が見えた」と答えると、「神の姿が見えたことは誰にも言わないように」と命じられた。レーニン主義は神を否定している。

(筆者による)この逸話の締めくくり・・・「神の姿がそんな所で見えるはずないでしょ!」とクリスチャンは笑った。・・・

            **************   

(二)  潮の満ち干

hazah_23__03.jpg① 海を護り、生物を護る潮流の絶妙な働き

 潮の干満により海に潮流が出来て流れ続けて海水が澱むのを防ぎ、海岸線や海全体が清浄に保たれること、また、潮が流れ続け、海面は上下運動をして酸素が海水中に均一に溶け込むので、海の生物は溶け込んだ酸素を呼吸して生きることが可能になっていることを、先月号で簡単に紹介した。

 また、海が清浄に保たれることは、実は陸に棲む生きものにとっても、同様に必須のことである。地球表面の七十%を覆う莫大な量の海水が動き続けることにより、大量の海水が絶えず空気と接触して、空気中の炭酸ガス濃度を調節する緩衝作用を果たしている。空気中に適切な炭酸ガスが存在していることは、植物にとって必須のことであり、植物が炭酸ガスを使って光合成を行い動物の栄養と酸素を供給することは、十月号で紹介した。

 ② 潮汐力(起潮力)

 潮の干満を引き起こすメカニズムについては相当解明されている。地球と月の相互の重力は、両方の質量に比例し、両者間の距離の自乗に反比例する。即ち、図・上に示しているように、月と地球は重力で相互に引っ張り合うので、地球では月の位置している方向(図の水平方向)に大きく引っ張られる。すると、移動しやすい海水は重力で地球上を移動し、海水面が高くなる場所が生じる。図のAの地点では、海水が月の重力に引っ張られて高くなり、Bの地点では、逆に他の場所より月から遠いため、引っ張られる力が弱く、他から取り残されるようになるため海水面が高くなる。このAの地点、Bの地点が満潮であり、海水面が一番低くなっている間の場所が干潮になる。

 潮の干満は主に月の重力で起こるが、太陽の重力もその半分程度の影響を与えている。月の大きな重力と太陽(より小さい重力)が及ぼす重力の強さが場所により異なるために、地球のまわりの重力場に勾配が生じる二次的な力として潮汐力(起潮力)が引き起こされる(図・下)。

(三)  日食


hazah_23__02.jpg 月は太陽の四百分の一の大きさであり、地球と太陽の四百分の一の距離の位置に創造された(図)。そのために、地球上から観測した場合、太陽と月の見かけの大きさはほぼ同じであるが、公転軌道が真円ではないため、太陽と月のみかけ上の大きさは微妙に変化している。月の方がやや大きく見える時は、皆既日食となり、月の方がやや小さく見える時は、金環日食となり、まわりに細い光の環が見える。皆既日食では、光球が完全に隠れたときに、真珠色に輝くコロナを肉眼でも見ることができる(写真)。

 もし月が何十億年も地球から遠ざかり続けてきたとしたら、そして月が出来てから数十億年後に人間が造られたのなら、その時には月はすでに地球から遠く離れており、皆既日食が起こる時期は遙か昔に過ぎ去ってしまっている。実は日食が起こるかどうかではなく、現在地上の生物は存在し得ないことは明白である。

 夜を治める月と星を造られた方に。その恵みはとこしえまで。(詩篇一三六:9)

 [Ⅱ] 惑星

 目を高く上げて、だれがこれらを創造したかを見よ。この方は、その万象を数えて呼び出し、一つ一つ、その名をもって、呼ばれる。この方は精力に満ち、その力は強い。一つももれるものはない。(イザヤ書四〇:26)

 (一) 太陽系

太陽を中心とした軌道上を周回している惑星は、日本人は語呂合わせで歌うので忘れない。太陽に近い水星から順に、「水金地火木/土天海」・「すい・きん・ち・か・もく・/ ど・てん・かい」と歌う。

 **歴史的出来事の年代を覚えるための年号の語呂合わせの文言は、同時に出来事を簡潔に説明している日本の深い知恵である。一休みして、語呂合わせで覚えることが出来る歴史を見て遊んでみよう。**

以後(15)良く(49)耶蘇を(たた)うべし:一五四九年にザビエルが来て、キリスト教(耶蘇)が伝えられた。

鎌倉良い(11)(92)武家政治: 鎌倉幕府が一一九二年、武家政権を確立。「良い国作ろう鎌倉幕府」は年代を伝えているが、武家政治という内容が落ちている。実は、鎌倉開幕年は江戸開幕ほど明確でなく、又、近年、本当の意味の武家政権ではなかったと言われ始めた。語呂合わせに興味があれば、筆者のHP・創造第四日目に幾つかを紹介している。

図に、太陽からの相対的な位置に惑星のイラストを示す。また惑星の姿形と大きさ比較を別に示す。太陽に近い岩石惑星である水星、金星及び火星は比較的小さく、その外側を周回しているガス惑星の木星と土星は非常に大きく、一番遠い氷惑星である天王星と海王星は中間の大きさである。

地球が今より太陽から一%遠いだけで、地球は氷の星になっているだろうし、逆に今より太陽に五%近かったら灼熱の星になってしまうだろう。

 主をほめたたえよ。日よ。月よ。主をほめたたえよ。すべての輝く星よ。(詩篇一四八:3)

hazah_23__07.jpg

 (二) 地球に近い惑星:金星と火星

 hazah_23__06.jpg金星は惑星の中で太陽に近い方から二番目の惑星で、地球に最も近い公転軌道を持つ。太陽系惑星の中で、大きさと平均密度が地球に一番似た惑星であるため、「地球の姉妹惑星」と表現されることがある。

 金星には、主成分は二酸化炭素で窒素を僅かに含む大気が存在している。大気圧は非常に高く地表で約九十気圧で普通の生物は粉々になる気圧である(地球で水深九百メートルに相当)。金星は地球より三十%太陽に近く、さらに二酸化炭素の温室効果があるので、地表温度は平均四六四℃、上限 五百℃に達する灼熱の惑星である。気圧、大気の成分、地表温度、いずれも動物はもとより植物も存在できる条件からは遙かに遠い。                    

 一方、地球のすぐ外側を周回する火星の大気は非常に希薄で、地表での大気圧は地球の平均値の約0・七五%に過ぎず、生物を受け容れる事は出来ない気圧である。大気が希薄なために熱を保持する作用が弱く、平均気温は零下四三℃で凍り付いている。大気の組成は二酸化炭素が九五%、窒素が三%、アルゴンが一・六%で、他に酸素や水蒸気などの微量成分を含むが、もとより生物を支える可能性はない。

 地球型惑星であり地球に直近の金星も火星も、生物が生きることが出来る環境とは全く無縁であることは明らかである。他の惑星に生命体の存在を求めて火星に水はないかと探し回り、また太陽系外に飛んで行く探査機にメッセージを搭載して宇宙人に語りかけ、地球外の知的生命体の存在を信じる儚い夢を描いたカール・セーガンという天文学者・SF作家がいた。

 また、天に目を上げて、日、月、星の天の万象を見るとき、魅せられてそれらを拝み、それらに仕えないようにしなさい。それらのものは、あなたの神、【主】が全天下の国々の民に分け与えられたものである。(申命記四:19)

 


このシリーズは、マルコーシュ・パブリケーションの発行するキリスト教月刊誌「ハーザー」で連載した内容を転載したものです