24.生き物の創造:いのち

神は仰せられた。「水には生き物が群がれ。鳥が地の上、天の大空を飛べ。」神は、海の巨獣と、種類にしたがって、水に群がりうごめくすべての生き物と、種類にしたがって、翼のあるすべての鳥を創造された。神はそれを見て良しとされた。神はそれらを祝福して仰せられた。「生めよ。ふえよ。海の水に満ちよ。また鳥は地にふえよ。」夕があり、朝があった。第五日。(創世記一章二十~二十三節)

 [序] いのちの息吹

 人間の学問である生物学では、構成している基本単位が似通った細胞であるということで、植物も動物も同じ「生物」と見なしている。しかし、創造主は植物と動物との間に、大きな境界を設けられた。植物は、いのちある動物の創造のための準備段階の一つとして、動物の食物として三日目に創造され、続けて地球を取り巻く環境である天体が四日目に創造されて、準備万端が調った。

 [Ⅰ]  生物学的細胞

 (一) 生物学的基本単位:細胞

植物も動物もその構成単位はいずれも細胞であり、その基本構造や主要な構成成分において類似点は多い。細胞は特別な機能を備えている脂質二重層の生体膜に包まれている。物質が膜を通過して出入りするのは自由ではなく、厳しい選択性が設定されている。物質が膜を通過するために、それぞれの物質に特別な装置・機構が備えられており、膜に組み込まれたそれぞれの分子や酵素が働き、エネルギーを消費して初めて膜を通過できる。

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細胞の内部は当初想像されたように空っぽでも、又は水や溶液だけに満たされているのでもない。図に示しているように、細胞内は塩類やタンパク質や脂質が豊富に溶け込んだ細胞質に満たされており、特別な機能を与えられた各種小器官が浮遊している。

 遺伝を司る任務を担っている核には、それぞれ特有な遺伝情報を担っているDNAが染色体という構造体を形成して存在している。また、呼吸・エネルギーを司るミトコンドリアなど、諸々の小器官が多数存在している。

 (二)  植物細胞

hzr_2015_12_2.jpg植物細胞は上に記述した細胞の特徴以外に、特別な小器官が備えられている。一つは、繊維で出来ている細胞壁が細胞膜の外を覆って固い細胞壁に囲まれているために、植物細胞は角張った形をしている。植物細胞のもう一つの重要な特徴は、緑色細胞の細胞内には葉緑体という特別な小器官が備えられていることである。葉緑体は光のエネルギーをデンプンに変換する光合成という機能を備えられており、動物に食物を供給する。

 タマネギの細胞は倍率の低い顕微鏡でも細胞分裂の様子まで簡単に観察できるので、中高生の生物学実験でしばしば使われる材料である。図に示しているのは、細胞周期の様々なステージの細胞の様子である。角張った細胞の中にそれぞれ一つの大きな核があり、核の中の染色体が整えられて、正確に二つに分けられて同じ遺伝情報が次の世代に引き継がれる。(a)は分裂していない細胞、(b)は分裂準備中、(c)は分裂中、(e)は分裂直後の娘細胞を示している。

 植物と動物の基本単位は同じ細胞であり、細胞の中に秩序正しく収納されているDNAが遺伝情報を順次子孫へ引き継いでいくのも、植物と動物は基本的には同じである。主は、種類にしたがって増えていく機構を与えて植物を三日目に創造なさって、その同じ機構を用いて、五日目にはいのちある動物を創造なさったのである。

 [Ⅱ] いのち

 創造の第五日に、主はいのちのあるもの、水に生きる生き物と空を飛ぶ生き物を創造なさって、「生めよ。ふえよ。」と、祝福された。

 (一) 主に祝福されたいのち

生物学的生物と主が定められた「いのちあるもの」の定義とは、根本的に異なっている。生物学では、植物と動物との間に本質的な相違点を置いておらず、進化思想では自然発生した最初の一つの細胞から連続的に「進化」という過程に乗って、植物・動物が発生したと考えている。

 聖書はどのように教えているだろうか? 植物は動物と人のために与えられた食物であり(創一・29, 30)、動物はいのちを持つもの、血液を持つもの、主が祝福を与えられる対象である。聖書はいのちについて明確に定義している。

  なぜなら、肉のいのちは血の中にあるからである。わたしはあなたがたのいのちを祭壇の上で贖うために、これをあなたがたに与えた。いのちとして贖いをするのは血である。(レビ記 十七・11)

 (二)  いのちを支える血液

いのちの血を与えられた動物は、全身を駆け巡る血管系によって「いのち・エネルギー」の源である酸素を体の隅々にまで運び、そして生命活動の結果生じた代謝廃棄物や炭酸ガスが全身から回収される。酸素や栄養を運ぶ血管系は動脈で、真っ赤な鮮血であり、炭酸ガスや廃棄物を回収する血管系は静脈で、通常私たちが目にする赤黒い血液である。              

  血液は非常に良質の溶媒で、様々なものがよく溶けるので、電解質・ミネラル、タンパク質(アルブミン)などが大量に溶け込んでいる。この血液の液体成分である血漿に溶け込んでいる様々な栄養分を、動脈を通して全身に運び、帰りには静脈を辿って全身から代謝廃棄物を回収する。

 (三) 赤血球とヘモグロビン                  

一方、酸素を運ぶのは数多くある顆粒成分のうちの赤血球であり、電顕写真に見られるように円盤状である。イラスト(下)に示したように中心部は薄くなっているだけで、ドーナツのように孔はあいていない。この赤血球にヘモグロビンという特別なタンパク質が数多く結合しており、そのヘモグロビンの鉄に酸素が結合して全身に運ばれる。漫画に示したように、赤血球(ヘモグロビン)は言うなら宅配便で、全身くまなく必要とする場所に酸素を運び、そして代謝の結果生じた炭酸ガスを回収して回る。

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 この大きなタンパク質ヘモグロビンは四量体を構成しており、図に示したように非常に複雑で、精巧に造られた特別な立体構造(高次構造)をしている。ヘモグロビンの重要な機能はこの構造によって生み出され、支えられている。中心に描かれている円の中、上から約三分の一の場所に位置する薄い色の小さな丸い部分が酸素分子で、ヘムという特別な構造に結合している鉄に結合することが出来る。ヘモグロビンは絶え間なく動いて、酸素を結合したり離したりして全身に運んでいく。

このヘモグロビンの精巧な立体構造が崩れた時には、この絶妙な酸素運搬機能を果たせなくなり、重篤な場合は生命を危うくすることになる。ちなみに、ヘモグロビンにヘム鉄が結合することによって赤色を呈し、そのために血液は赤いのである。        

 (四) ヘモグロビンの構造と赤血球の機能

hzr_2015_12_5.jpg主にアフリカ、地中海沿岸、中近東、インド北部で見られる遺伝性の貧血病である鎌状赤血球症は、赤血球の形状が鎌状になり酸素運搬機能が低下して起こる重篤な貧血症である。正常な赤血球は先に説明した通り円盤状であるが、鎌状赤血球症では、光学顕微鏡写真に示したように、円盤状の正常赤血球に混じって三日月型あるいは鎌状に見える異常な赤血球が多数見られる。電顕写真では一層明らかに鎌状赤血球の形状が確認できる。このような形状の変化が起こると、鎌状赤血球は酸素結合能を失う。

 このように赤血球の形状が著しく変化しているので、ヘモグロビンの立体構造、そして立体構造を決めるアミノ酸配列(一次構造)も、正常なヘモグロビンとは大幅に異なっていると推測されるだろう。両者のアミノ酸配列を調べると、非常に驚くべき、興味深い事実が判明した。

 タンパク質の構造は、その構成アミノ酸の種類とその配列によって高次構造が定まる。ヘモグロビンはα鎖(アミノ酸一四一個)とβ鎖(アミノ酸一四六個)の二つのサブユニット各二つずつ、計四つのサブユニット、五七四個のアミノ酸から構成されているタンパク質である。

正常ヘモグロビンと鎌状赤血球のヘモグロビンを比較すると、全く驚いたことには、β鎖のたった一つの六番目のアミノ酸が異なっているだけだったのである。すなわち、酸性アミノ酸であるグルタミン酸から性質の全く異なる脂溶性アミノ酸であるバリンに置換されているだけである。

 大きなタンパク質に於いて、アミノ酸が僅か一つ、〇・三五%異なっているだけで、立体構造が致命的にかき乱されて、鎌状の赤血球になり酸素結合能を失ってしまうのは、一体どういうことだろうか? 主の御手によって創造されたたった一つのタンパク質、ヘモグロビン分子の隅々にまで主の目が行き届いて完璧な構造をお創りになって生命反応の中核の機能が営まれている偉大な御業に、唯々驚嘆するばかりである。

 (五) 全身を駆け巡る血管系

hzr_2015_12_6.jpg 人の血液循環系は、簡単に記すと漫画のような感じである。図に濃い色で描いた血管系は動脈、薄い色で描いているのは静脈を表している。全身から集まってきた汚れた血液は左右両肺において炭酸ガスと酸素のガス交換が行われ、酸素で満たされた新鮮血となって心臓に戻る。心臓は非常に強力なポンプであり、一日に十万回も拍動し、一分間に約五リットルの血液を全身に送り出す。脳、肝臓、胃や腸などの消化管、腎臓へ、そしてそれぞれの毛細血管へ新鮮血が送り出される。毛細血管まで入れると実に十万キロメートル、即ち地球を二周り半できる長さの血管が全身に張り巡らされて、命を支えるこの驚くべき機能が営まれているのである。

 動脈血から配られた酸素は生命反応のために全身で費やされた後、代謝廃棄物と炭酸ガスが静脈を通って心臓に戻り、そして肺に戻ってくる。

 [Ⅲ] 結語

 「血は命を表すものである。(創造主訳)」

 血液はいのちを支えるもので動物の重要な特性であることが、聖書に明確に記述されている。生物学の進歩により心臓の働き、血管系の機能などが明確になって、人類は聖書の記述の確かさを確認することになった。次回に、いのちの息を呼吸し、命を表す血液を清浄にする肺の精巧な構造と機能について紹介する。

 


このシリーズは、マルコーシュ・パブリケーションの発行するキリスト教月刊誌「ハーザー」で連載した内容を転載したものです