26.種類にしたがって

 

 神は、海の巨獣と、種類にしたがって、水に群がりうごめくすべての生き物と、種類にしたがって、翼のあるすべての鳥を創造された。神はそれを見て良しとされた。神はそれらを祝福して仰せられた。「生めよ。ふえよ。海の水に満ちよ。また鳥は地にふえよ。神は、その種類にしたがって野の獣、その種類にしたがって家畜、その種類にしたがって地のすべてのはうものを造られた。神は見て、それをよしとされた。(創世記1章21、22、25節)

  

 [Ⅰ] 序:種類にしたがって

 「種類にしたがって」創造されたことが、海の動物と鳥の創造に関して一回ずつ、家畜、野の獣、這うものに関して繰り返し、繰り返し5回も書かれ、そして実は植物に関しても三回書かれていて、親の形質が遺伝される植物、動物に関して、合計10回「種類にしたがって」創造されたと書かれている。5日目、6日目に創造された動物を中心に「種類にしたがって」の重要な意味を考える。

 [Ⅱ] 「種類」って何?

 (1) 種類にしたがって創造され、子孫が増える

hazah-26_1.jpg 主は「種類にしたがって」動物たちを(そして植物も)創造なさった。そして、いのちのある動物には、種類にしたがって「生めよ、増えよ」と祝福を与えられた。
 「生めよ、増えよ」ということは、同じ本質を持っている子どもを生んで、代々子孫を増やすということ、すなわち種類にしたがって繁殖するということである。「種類にしたがって」と要所、要所で丁寧に繰り返し述べられていることから、植物や動物がそれぞれ「本質的な遺伝情報にしたがって」創造され、そして,それを維持して繁殖することが非常に重要なことであったことが分かる。

 (2) 「種類」って何? 新しい言葉「バラミン」

 「種類」と日本語に翻訳された原語は「ミーン」という言葉である。そして、全く新しいものの「創造」の動詞は「バーラー」という言葉である。この「ミーン」に対応する日本語も、「バーラー」に対応する日本語も存在しないので、全く新しく創造された植物・動物に対して、様々な意味を含みうる既存の「種類」という言葉よりは、「全く新しく創造された」という特別の意味を込めて、クリエーション・リサーチ・ジャパンは「バラミン」という新しい言葉を採用することにした。

 [Ⅲ] バラミンvs人間の生物分類体系

 (1) 生物分類体系

バラミンの生物学的な詳細を学ぶために、生物分類体系について簡単に学んでおくことにする。
 生物分類学は神を敬ったリンネに始まったが、彼は生物を植物と動物の二界に分けた。約百50年後、進化論を主張するためにデーターを捏造してまで「反復説」(個体発生は系統発生を繰り返すという説)を提唱したヘッケルは、原生生物界を付け足して三界説を提唱した。その100年後には、界の上の分類項目ドメインを設け、真核生物とそれ以外に分ける3ドメイン説なども提唱された。

 分類の階層の界の下の分類項目の流れを図に示した。初めは、界-門-綱-目-科-属-種と一応一直線に分類できるかの如くに思われた。しかし、研究が進むにつれて多くの情報が加わり、この分類に大きな矛盾を生じ、図に示したように各階層に数多くの枝分かれを考えざるを得なくなった。このような枝分かれは時間と共にどんどん増えて、矛盾を解決するために増やした枝分かれは新たな矛盾を生みだし、理解出来ない複雑な分類表はますます膨らんで行きつつある。

 (2) 生物学的分類はバラミンに対応するのか?

 人間が動植物の発生・創造を考える時、無意識下に進化論的発想法を基準にし「進化の順序」で動物の分類を考えるために、聖書の創造の順序について、論理を無視して感覚的に「おかしい」と捉える。人間の定めた生物分類体系が、聖書の基準「種類・バラミン」にどのように対応するか、私たちに馴染みの深い犬と猫を中心にして少し調べてみよう。 

 (2) の1 食肉目イヌ科

hazah-26_2.jpg上に書いたように分類は諸説があり非常に複雑で、例えばイヌ属に関しても、食肉目-イヌ亜目-イヌ下目-イヌ科と延々と細かく分類されている。イヌ科として分類された動物は、イヌ属をはじめとして、キツネ属、ホッキョクギツネ属、タヌキ属、ヤブイヌ属などに細分されており、これらは相互に子孫を設けることは出来ないので、異なったバラミンであると考えられる。

 (2) の2 食肉目イヌ科イヌ属

 イヌ属はニホンオオカミなど各種オオカミ、家イヌ、コヨーテ、ディンゴ、各種ジャッカル等々に分けられているが、これらイヌ属は相互に交配可能であり、創造された原種バラミンから変化・派生したものと考えられる。                                

 このような多様化の機構は、イラストに示しているように原種がそれぞれ環境に適応して、あたかも別の種類のように変異したものと考えられる。この変異は、最初に創造された時に与えられていた遺伝子の変異の多様性の範囲内で起こることであり、不完全ではあるが相互に交配は可能なのである。それは遺伝情報の減少によって起こることであり、新しい遺伝情報は追加されない。

hazah-26_3_2.jpg 例えば家イヌとオオカミとは棲み分けをしており、相互に性質も異なるので自然の状態では交配しないが、人工的に交配させると、図に示したように不完全ではあるが子孫を設けることが出来る。
 ハスキー犬とオオカミとは外見がよく似ていて、ほとんど唯一の相違はハスキー犬の巻尾である。犬ぞりを引く持久力が強い為、狼とハスキーの交雑が普通に行われている。又、コヨーテとイヌとの交雑犬もコヨーテ・ドッグ(コイドッグ)として知られている。
 同じイヌ属のジャッカルは日本人には馴染みのない動物だが、聖書には荒野に住む恐ろしそうな動物として描かれているので(士師15:4, 5、ヨブ30:29、哀歌4:3など多数)クリスチャンは名前だけはよく知っている。

 しかも、あなたはジャッカルの住む所で私たちを砕き、死の陰で私たちをおおわれたのです。山犬は、そこのとりでで、ジャッカルは、豪華な宮殿で、ほえかわす。(詩篇44:19)

 (2) の3 食肉目イヌ科イヌ属・家イヌ            

 私たちに身近な家イヌは、1~2kgのチワワなどから80kg以上にもなるセント・バーナードなど、大きさや姿形の違いも別の種類の動物だと思われるほど多種多様であるが、「イヌ」であり交配も完全に行われる。このように余りにも外見などが「変異」しているのを、「進化」という言葉で適用されることが多い。しかし、これは進化ではなく環境への適応、特殊化であり,その環境に必要のない遺伝情報は失われるので、その結果、その環境でないと生きられないことになる。
 犬の環境への適用を単純化して考えると、例えば、寒い土地では寒い環境に適した遺伝情報だけが残り、不必要な遺伝情報を失って環境に適応した「種」へと多様化する。この適応が進んだ結果、寒さに不向きな短毛を生じる遺伝情報"S"が完全に失われてしまい、最終的には長毛の遺伝情報"L"を持っているイヌだけがその環境下で生き延びることになる。寒暖の差、その他無数とも思える様々な環境要因によって、元々のバラミンから、様々な野生のイヌ、様々な家イヌの種が出来た。世界中に家イヌの品種は六百種以上あり、その家イヌのミトコンドリアDNA配列の変異を調べた結果、単一の遺伝子プールに由来する共通の起源から生じたことを示唆していることが判明している。

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 (2) の4 食肉目ネコ科

hazah-26_5.jpg 食肉目-ネコ亜目-ネコ科は、ヒョウ属、ネコ属、チーター属に分類されている。これら属の間では相互に子どもを設けることが出来ないので、それぞれ別のバラミンであると考えられる。ヒョウ属に分類されているヒョウ・ライオン・トラ・ジャガーなどは,一代限りではあるが相互に子どもを設けることが可能である。ヒョウとライオンとの間にレオポンが、ライオンとトラとの間にライガー、トラとライオンの間にタイゴン、ジャガーとライオンの間にパンソンなど、いずれも不妊で孫は出来ないが,一代限りの子どもは生まれている。

 ネコ属には家ネコとヤマネコ(野生)とがいるが(ヤマネコは野良猫ではない。野良猫は家ネコである)これも一代限りではあっても交配可能である。したがって、ヒョウ属、ネコ属は,イヌ属同様、属の分類項目が同一のバラミンに相当すると考えられる。
 ついでに、家ネコはその愛くるしい鳴き声のために誤解されている向きがあるが,自由な行動を一応許されている?ペットにしては野生を失っていない動物である。人に所属せず自立しており,一度間違うと恐ろしい野生を発揮する。ヤマネコであってもオセロットはペットになるくらいに温和しい。

  (2) の5 イノシシ科

イノシシは、鯨偶蹄目-イノシシ亜目-イノシシ上科-イノシシ科-イノシシ属-イノシシ種と複雑に分類されており,お馴染みのブタは,さらに亜種と分けられている。このように細分されていると,イノシシとブタは遠い種類の動物のように見えてしまうが,よく知られているようにイノシシとブタは自由に混血可能であり,ネコ科やイヌ科とは異なり,少なくとも「科」以上が同じバラミンである。

 [Ⅳ] 創造主が初めに定められた遺伝の法則

 (1) 主が制定された生物学的大原則

 「バラミンにしたがって生めよ・増えよ」と主は命令され、「バラミン」は子孫を増やすために主が設けられた境界線である。バラミンにはそれぞれ本質的に重要な特別の性質が備えられており、他のバラミンと混ざって子孫は出来ないということである。再生産するための生理的、生化学的機構が、確実に受け継がれていくようにと企画・設計されたのであり、その根本的機構を乗り越えることが出来ないように、創造の時に主が定められた重要な生物学的法則である。すなわち、生物に「進化」はないという生物学的大原則を創造主が定められたのである。

 (2) 誰でも知っている遺伝学の常識

 「瓜の蔓には茄子はならぬ」「蛙の子は蛙」などと様々な諺になるほどに,一番基礎的な遺伝学は誰でも知っている。主が定められた生物学の大原則「種類の垣根を越えて子どもは出来ない」という生理的、生化学的機構について,次回少し学んでみようと思う。

 [Ⅴ] 結語 祝福は主が授けられる

 神は、その種類にしたがって野の獣、その種類にしたがって家畜、その種類にしたがって地のすべてのはうものを造られた。神は見て、それをよしとされた。(創世記1章25節)

 



このシリーズは、マルコーシュ・パブリケーションの発行するキリスト教月刊誌「ハーザー」で連載した内容を転載したものです