29.大洪水を生き延びた恐竜たち

その日、主は厳しく、大きく、強い剣をもって逃げる蛇レビヤタン 曲がりくねる蛇レビヤタンを罰し また海にいる竜を殺される。

(イザヤ書二十七章一節・新共同訳)

地において主を賛美せよ。海に住む竜よ、深淵よ

(詩篇一四八篇七節・新共同訳)

 [Ⅰ]  序:恐竜は多種類の動物集団

前記事(28.恐竜って何?~ 実在した動物なの? ~)で詳細に検討したように、恐竜という分類項目はあまりにも好い加減で、山羊・鹿・熊・狼・狸・兎・猪・野鼠等、何種類もの動物群をひっくるめて野獣と名付けるほど、おおざっぱな総称であることを確認しておこう。

[Ⅱ]  生痕化石

生物がかつて生存していたことを示す証拠となる化石を、生痕化石と言う。

(一)皮膚化石・・写真は頭の形で解るように、カモノハシ竜の仲間・コリトサウルスで、その皮膚化石である。

hazah29_1.jpg

(二)ミイラ・・写真はミイラ化した同じく鳥脚類である。

 hazah29_2.jpg

(三)卵・巣化石 

 写真は竜脚類の巣に並んだまま化石化したものであるが、卵の中には砂が詰まっている。孵化がまさしく起こりかけひびだけ生じている卵、孵化の途中のもの、生まれたての雛等が混ざった巣全体の化石が発掘されているので、恐竜の生態を推測することが出来る。孵化が完了する最後の一瞬の姿を捉えた化石が発掘されており、如何に急激に化石化したかが推測できる。ロンドン博物館の模型は、様々な段階にある卵と孵化した雛等を巣に配置して造った模型である。

hazah29_3.jpg

 卵は、その成熟した大きさを考えると非常に小さい。卵の大きさの比較図には、それぞれの成体の大きさを書き添えている。小さな鶏の卵の大きさに比べ、体長12mの恐竜の卵が僅か30cm位なので相対的に非常に小さい。恐竜は爬虫類の仲間と考えられているので、長く生きれば生きるほど大きくなったのだろう。地球の始まりには、今とは比べものにならない良好な生息環境であったので、発掘されている恐竜は一千年以上生きていた恐竜であろうと思われる。

hazah29_4.jpg

(四)糞化石

 様々な形の糞化石も多く発見されている。化石は、写真に見られるように、今まさしく排泄されたばかりの糞の形状をそのまま留めている。普通の状態では、排泄して短い時間内に元の形状はなくなるものである。排泄直後にその形を留めて化石化するような何か激変が起こったということである。

 hazah29_5.jpg

(五)足跡化石

 糞化石よりさらに驚くのは足跡化石で、どんなにくっきり足跡がついたとしても、乾きかけているセメントの上を歩いたのならともかく、足跡はすぐに消えてしまうものである。にもかかわらず、いくつかの特徴的な足跡が化石として遺っているのである。足跡がついてすぐに化石化するような条件に曝されたのでなければ起こらないことである。このように足跡化石もまた、何かの急激な変化が起こったことを示している。

 hazah29_6.jpg

[Ⅲ]  発見された軟組織

 最近まで、化石とは生物が石化したものと考えられていて、軟組織が発掘されるなどとは夢にも思っていなかった。しかし、赤血球や軟組織が発見され、生物反応を行う、言うなら生きている組織が発見されたのである。現在の生物学の科学的レベル、技術レベルを考えると、このような組織切片からクローン恐竜が造られるのもそんなに遠い先の話ではないだろう。ただ、例え竜脚類の組織からクローン竜脚類を造っても、クローン羊同様短命であろうし、20mにも及ぶ大きな恐竜に成長することなどあり得ないだろう。

 

[Ⅳ] 恐竜は何を食べていたのでしょう?

 絶滅した動物の食性を推測するのはそんなに簡単なことではないが、数多くの化石、生痕化石などの証拠からある程度推測されている。例えば、未消化のまま胃や腸に木の葉等が残存しているのが発見されたり、動物同士が噛み合った状態で化石化しているのが発見されたりしている。また糞化石を調べると、その動物の食べていたものが分かる。

hazah29_7_8.jpg

hazah29_9.jpg

 恐竜の食性を簡単にまとめて表にして示す。獣脚類は肉食であるが、広く宣伝されてきたのとは異なり、肉食恐竜は少なく、ほとんどの種類の恐竜は植物食であった。カナダで調査されたデーターでは、95%は植物食で、肉食の恐竜は僅か5%であったという。

  鋭い牙を持った動物は肉食であると思われているが、しかし、パンダなど、鋭い牙を持っているにもかかわらず草食である動物も数多く知られている。コウモリは鋭い歯を持っているが、花の蜜を吸って生きているものから、肉食のものまで様々である。南アメリカに棲息するクロウアカリは、木の実、果物、木の葉、植物の茎、昆虫を食べる。白熊はレタス・リンゴ・ブロッコリ・ジャガイモなど、多種類の植物を食べる。したがって、恐竜も歯から安易に食性を類推するのは間違いをする危険がある。

 

[Ⅴ] 収蔵標本の個体数

hazah29_10.jpg 様々な化石が発掘されている中で、恐竜の発掘数は群を抜いて多いように思われるが、50種類もの動物をひとまとめにして見ているためかも知れない。また体全体の骨格が発掘されている例は多くはない。正確な復元が可能な部分、つまり頭骨と骨格を持つものは全体の20%に過ぎない。頭骨の一部でも発掘されたものは57%、一属につき標本が一体しかないものが半数近く、五体以下のものが74%に及ぶ。博物館に行って展示してある化石標本をよく観察すると、実際に発掘された化石の欠けている部分に、想像によって付け足してある部分の占める割合の大きさに気がつくだろう。展示も恐竜図鑑の多くも実際には推定だけに基づいて頭を描いていることも少なくないのである。収蔵標本の数を表にまとめたが、一部しか発掘されていなくても一体として数えた数字である。

 

[Ⅵ] 日本で発掘された恐竜

 福井県勝山市は日本で初めて肉食恐竜の全身骨格が発掘された所で、フクイラプトルと命名された。兵庫県丹波市山南町で竜脚類の一グループに属すると思われる化石が二〇〇六年に発見され、現在も発掘中である。

[Ⅶ] 恐竜絶滅の理由・・進化論 vs 創造論

 聖書に恐竜という動物は書かれていないので、ノアの洪水で滅びたのではないかと疑っている人はかなりいるようである。実は、一八四二年、イグアノドン(鳥脚類)、メガロサウルス(ティラノサウルスと同じ獣脚類)など三種の爬虫類の化石が、R・オーウェンによって「恐ろしいトカゲ(dinosaur)・恐竜」と名付けられるまで恐竜という言葉は存在しなかったのである。英語は聖書の原語behemoth(ベヘモス)を採用したが、日本語・ヨブ記では河馬と翻訳された。しかし動物の姿が克明に描かれているので恐竜・竜脚類であることに疑問の余地はない。聖書の他の箇所に、竜とか、巨獣とか、レビヤタン、蛇(serpent)と書かれている動物は、ベヘモスとは別の恐竜であろうと考えられている。

 恐竜が多くの種類の動物の総称であったとしても絶滅したというのが、共通の認識になっているようである。但し、特に小さい恐竜に関しては、現在、絶対に棲息していないと断言することは難しい。

(一)進化論の説明

 恐竜は二億年以上前に出現し、一億四千万年間繁栄し、六千五百万年前に絶滅したと考える。化石の成因は、一頭の恐竜が偶然水の傍で死に、水の底に沈み、泥に覆われ、流されずに留まって骨が残り化石化したと考える。このようにして化石化するのは、一頭でも不可能なのに、化石の墓場の説明は出来ない。進化論で提唱されている地層年代については、科学的に説明できない。

恐竜絶滅の理由は、①メキシコ・ユカタン半島に隕石が落ちた、②何百万年に亘る連続火山噴火、③気候変動による生殖能力の低下、④ホルモン異常、⑤周期的な生物の大絶滅など、様々な説が唱えられている。

(二)創造論

hazah29_11.jpg

 化石の主な成因は、約四千五百年前に起こったノアの洪水によると考える。洪水の時、箱船にはあらゆる種類の動物が入ったと聖書に書かれており、当然恐竜も入ったのである (創七・2-3、8-9、14-16)。箱船の大きさを計算すると、充分入れたことも明白である。図は人と動物を入れた箱船の断面図である。象やキリンが十分入れる大きさであり、恐竜は成獣であっても20mもの大きなものである必要はなかった。恐竜がいつ頃絶滅したかは不明であるが、紀元前数百年頃には生息していたことが聖書に記録されている。ヨブ記(BC600)、詩篇(BC1000)、エレミヤ(BC5~600)、イザヤ(BC700)

 ノアの洪水によって「上の水」が地上に降り注いでなくなり温室効果が弱まったので、温度の変動が地上全般に広がった。大洪水の影響が数百年にわたって続き、地震、火山火災、局地的な洪水等もあり、氷河時代が訪れたと思われる。氷河時代には、アメリカ大陸・ヨーロッパ・アジア地域(左図)とカナダ(右図)が氷で覆われたと考えられている。気候・生息環境の激変に適応できない動物が絶滅し、食物を得るための生存競争も激烈になった。恐竜は変温動物であり、この激変に大打撃を受けて生命力が低下し、遂に絶滅への道を辿ったのだろう。それ以外に、現在も進行している他の各種生物の絶滅と、ある意味で同じ経過を辿ったと思われる。

hazah29_12.jpg

 マンモスも絶滅しているが、マンモスの胃の中からキンポウゲなど温帯地域の植物が発見されており、その地域が昔温暖な気候であったことが分かる。

 hazah29_14.jpg

[Ⅷ] 氷河時代と聖書

 洪水後、ノアの子孫は中東を中心に広がっていき、氷河時代以後は、東西南北、全世界に広がっていったと考えられる。