30.主の叡智が光っている生き物たち

神は仰せられた。「水には生き物が群がれ。鳥が地の上、天の大空を飛べ。」神は、海の巨獣と、種類にしたがって、水に群がりうごめくすべての生き物と、種類にしたがって、翼のあるすべての鳥を創造された。神はそれを見て良しとされた。神はそれらを祝福して仰せられた。「生めよ。ふえよ。海の水に満ちよ。また鳥は地にふえよ。」(創世記一章二十~二十二節)

 [Ⅰ]   いのちとは? 種類とは?

全知全能の創造主が万物を無から創造なさった経緯について少し学んで来た。地球を造り、海と陸を分かち、成熟した植物を備えて光合成の働きを開始させ、動物が使うことの出来る有機エネルギーの供給機構を整備された。さらに、地球・植物・動物を安全に維持するために大気を整え、そしていのちを地上に置くための最後の準備として、太陽・月を始めとして天体を美しくしつらえられた。

 いのちは血液に託されており、酸素を効率よく供給するために、肺との連携、全身の制御機構が整えられた。細胞という基本単位で構成されている生物は種類にしたがって創造され、遺伝法則に従って子孫に継承されることなども学んだ。しかし、「種類」を決定する重要な遺伝情報がDNAに大切に埋蔵されていることが分かっても、その実態については不明であることも学んだ。

 生物の不思議であり興味をかきたてる代表である恐竜について、二回に亘って詳細に学んだ。「恐竜」と言われる一群の動物がどのようなもので、箱船に入って大洪水を生き延び、今から二千数百年前までこの地球上に生存していたこと、その意味では他の動物たちと本質的に同じ動物と見なされること、決して「異様な」あるいは「神話的な」動物ではないことを学んだ。

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 こうして、いのちある生き物全般について一応の理解をした後に、主の創造の工程を先に進めて、いのちの詳細を見つめたいと思う。五日目に創造された「魚と鳥」は人に馴染みの動物で、魚が難なく泳いでも、鳥が空を自由に飛んでいても、自然なこととして無意識に受けとめている。だが、「だが、魚や鳥は驚くほど種類が多く、その一つ一つが極めて特殊で精巧に創造されているのである。ここでは、代表的な魚と鳥を取り上げて、いのちを支える絶妙な仕組みの一端を学び、偶然の産物として存在することはあり得ないことを知的にのみならず、感覚として捉えていただければと思う。            

 

[Ⅱ]  水に群がり生きるもの

(一)水に生きるものとは?

創造の第五日に、水に生きる生き物を主は創造されたが、その動物の種類についての詳細は分からない。ただ、私たちは、ほとんど反射的に進化論的分類の定義に飛びついてしまいがちであり、鯖、鰯、マグロ、等々おなじみの魚類を思い浮かべる。ウナギ、イカやエビも思い浮かべる。正解である。確かに、人類、特に日本人にとって、これらは水に生きる動物の代表とも言えるだろう。

 では、クジラやイルカ、アシカ、アザラシはこの中に入るのだろうか? もちろん、これらは水に生きる生き物であるから、魚と同じときに創造されたのである。ところが、教えられた分類学的知識は「これらはほ乳類だから違う」と言う。非常に優秀で、記憶力に長けている私たちの頭脳は、進化論的分類学にどっぷりと浸っていて、すべての物事を進化論で理解するように訓練されている。例え聖書が「水に群がり生きるもの」と明確に言っていようとも、簡単に見逃してしまう。自分の持っている知識が優先して、無意識下に聖書を無視してしまうのある。そして、この間違いを指摘されると、「あぁ、そうだった」と過ちを認める。これは簡単な例であるから、それで終わってしまう。しかし、聖書のその他の記述は、進化論的考えと相容れないことが数多くあるにもかかわらず、聖書を読むときは進化論的思索に立っている。間違っていると指摘される幸せは、そんなにしばしば訪れないし、実は間違いを指摘されても、この例ほど単純ではないので、進化論的理解に固執することの方が多いようである。

(二)魚が溺れない理由

水中の溶存酸素を呼吸する機構

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魚は発達したえら (鰓) により、水中の溶存酸素を取りこみ、体内の二酸化炭素を排出して呼吸(ガス交換)を行う。この頃、丸ごとの魚を見たことのない人が増えたが、図に示したように、首筋にあるガサガサする手触りの、大きな食べられない部分が鰓である。写真のように多数のフィラメントになって広がり表面積が大きくなっている。

 鰓には血管が通っていて赤いが、海・川に溶けている酸素と直接ガス交換を行う。この重要な機能に、馴染みの深い浮袋が一役買っている。動脈と静脈のきわめて細い毛細血管が網の目のように編み込まれている奇網と呼ばれる構造を通して、浮袋(鰾)に気体が送り込まれる。浮袋は伸縮性に富む風船のような器官で、ガスを溜めたり抜いたりして浮力調節を行う。

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 浮袋はさらに重要な役割を果たしている。反応式に示したように、浮袋のガス腺から静脈血中に乳酸(H+の放出)が分泌され、pHが低下する。このために、ヘモグロビンから酸素(O2)が遊離すると同時に炭酸水素イオン(HCO3+)が二酸化炭素(CO2)となる。これらの気体は奇網の対向流交換系(互いに逆方向に流れるガス・化合物・hazah-30_5.jpgイオンの交換系)を通じて動脈へと拡散し、ガス腺に戻って浮袋内に放出されて、ガス交換が完了する。

魚の血液循環系          

魚の心臓は一心房一心室であるが、前ページ図左下の挿入図に示したように一応四つの部屋に分かれている。全身から集められた血液は静脈洞を通って心房から心室を経て、動脈球からえらに送り出される。上図の右下に描いたように、えらのフィラメントでガスの交換を行い、毛細血管で酸素を受け取った血液は、直接全身に送り出されることが、ヒトの心臓・肺の機構とは著しい相違点である。そのメカニズムを一口で示すと、全身から心臓へ、心臓からえらへ、そして全身へという循環系である。

核のある赤血球

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拡大倍率六百倍のサカナの赤血球画像を示す。楕円形で有核(真ん中の濃色のものが核)である。ヒトの赤血球よりやや大きく、数は少ない。

 (三)マグロの刺身は塩辛くなく、淡水魚は水ぶくれにならない

 体液のバランスが崩れると一大事が起こる。私たちは通常、血中の糖やコレステロール濃度だけを語り、イオン濃度を話題にしないのは、ホメオスタシス機能が働いていてイオン濃度は簡単には崩れないからである。しかし、重病になって点滴などをするとバランスを維持するのが困難になる。そして、このバランスが崩れると生命が脅かされる。

 ある魚は塩濃度の高い海に、別の魚は淡水に、またこれらが混じり合った汽水に住む。回遊魚は川で産卵し、塩濃度の高い海に戻り、成魚となって、生まれた淡水の川に戻ってくる。これら海に住む魚の身は塩辛くはなく、淡水に住む魚は水ぶくれにならないで、正常な塩分を含む体液を維持している。図は、イオン(Na+, K+, Cl-)の移動と水の移動の方向を矢印で示し、長い矢印は移動量が大きく、短い矢印は移動量が少ないことを示す。長い矢印は動きが大、短い矢印は動きが小であることを示す。

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 左側の海水魚では、えらを通してイオンが能動的に排出され、また塩濃度の高い尿を排出することによって体液濃度が維持されている。一方、右側の淡水魚では食べ物を通して、またえらを通してイオンが能動的に吸収され、塩濃度の低い尿が排出される。このように、えらはガス交換の他にも、イオンの排出による浸透圧調節・アンモニア排泄を行っているのである。

 

[Ⅲ]  翼のあるすべての鳥       

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(一) 特別なガス交換機構・高い呼吸効率

人は空を飛ぶ鳥に憧れて、遂に鳥を模して飛行機を作った。時代と共に格段に優れた性能を持った飛行機が製造されている。しかし、今の技術革新を以てしても、鳥の足下にも及ばないことは誰の目にも明らかだろう。

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鳥の呼吸器は複雑で、イラストに示しているように、①肺・前後の開口部は気嚢に繋がっている、②前部気嚢群、③後部気嚢群の特別な三つの臓器群が連携して働いている。非常に効率良く酸素が取り込まれ、代謝が維持され、高い呼吸効率が得られている。

呼吸器系の空気の流れが、吸気と呼気とが異なった道筋を辿るように分離されており、イラストに矢印で流れの方向を示している。前部と後部の気嚢が拡大縮小を繰り返しポンプとして働き、空気は肺の中を一定方向に流れるように造られている。このように鳥の肺は息を吸う時も吐く時も酸素を取り込める機構(気嚢)を備えているので、効率良く酸素を使えるのである。

 

(二) 核・ミトコンドリアのある赤血球

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 鳥類の赤血球は核を持ち、また細胞内エネルギーを司るミトコンドリアを持っている。核を持たない赤血球が利用できるエネルギーはブドウ糖だけなのに対して、ミトコンドリアが存在すると、脂肪(ケトン体)を主要なエネルギー源として直接使えるので、エネルギーが効率よく利用できる。また、鳥の赤血球は大きいため酸素運搬能が高く、酸素を遊離しやすくなっているので激しい運動が可能になっている。

 

(三) ホバリング飛翔・ハミングバード       

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 トンボや蝶が蜜を吸う時、激しく羽ばたいて一点に留まる。鳥もまた、効率良く酸素や栄養を体の各部に送って、飛翔を含めた活発な生命活動が可能になっている。空中で静止しホバリング飛翔を行う時、毎秒約55回、最高で約80回の高速で羽ばたき、翼は約百八〇回転する。心拍数は一分間1,260回(毎秒21回)に達する。体重の25-30%が筋肉であり、昆虫を除き、ホバリング飛翔を行っている時は全動物で最高の代謝能を持つ。         

 

(四) 六千メートルの高度を酸素ボンベ無しで飛ぶ鳥

前後の気嚢が空気を溜めることが出来るので、一時的な空気の格納庫となって、肺には常に新鮮な空気が供給される機構が備えられている。また、先に記述したように脂肪を直接エネルギー源として使って、随時エネルギーを供給できるので、信じられない高度の上空を飛べるのである。

 

(五) 三万二千kmの渡り             

鳥や昆虫の渡りについては、今以て不明な点がかなり残されているが、最も長い渡りを行うキョクアジサシは北極圏ツンドラ地帯と南極周辺海域間、約三万二千kmの長い旅をするが、三日三晩、文字通り一休みすることもなく飛び続けるそうである。

この長旅がどのようにして可能になっているのだろうか? 鳥は渡りを行う前に予め肝臓などに体脂肪を蓄えて、体脂肪率が数倍に上がって出発する。鳥の渡りや魚の回遊が正しい目的地に往来できる不思議は今もしばしば言及されている。酸素・エネルギーの供給問題に加えて、鳥は三段階の情報によって無事に目的地に到達するようである。第一に太陽や星の配置、第二に磁場、第三に地形や環境の特徴を頼りに最終目的地まで到達する。

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[Ⅳ] 結語: 主の叡智による作品

特別に珍しい生き物ではない普通の魚、普通の鳥を取り上げて一瞥しただけでも、偶然に出来た作品でないことは明らかであり、主の叡智が光っていることを発見することが出来るだろうとの祈りを込めて、この稿を閉じる。