31.多種多様な小さないのち

 神は仰せられた。「水には生き物が群がれ。鳥が地の上、天の大空を飛べ。」神は、海の巨獣と、種類にしたがって、水に群がりうごめくすべての生き物と、種類にしたがって、翼のあるすべての鳥を創造された。神はそれを見て良しとされた。神はそれらを祝福して仰せられた。「生めよ。ふえよ。海の水に満ちよ。また鳥は地にふえよ。」(創世記一章二十~二十二節)

 

 前月号で、水の生き物の代表として魚、空を飛ぶ代表として鳥について、精巧に創られ護られているいのちの仕組みを垣間見た。これら代表的な動物以外、水中にも空中にも大小様々、無数とも思えるほどの生き物が創造された。小さな生き物のいのちを美しく維持するために、主が個別に組み込まれたきめ細かい生命機構を学んでみよう。

[Ⅰ] 空中を舞う生き物・・・昆虫

 昆虫類、甲殻類、クモ類、ムカデ類など、硬い殻と関節を持つ節足動物は、陸・海・空・土中などあらゆる場所に存在し、全動物種の八五%以上を占めている。ここでは昆虫のうち飛翔能力を与えられているチョウ・トンボ・ハチ・セミなどについて、体の構造、機能、変態の過程やその生態を学ぶ。

(一) チョウ(蝶)とガ(蛾)

① 蝶と蛾・・・どう違う?

 一般的には「蝶は美しく、昼間活動し、幼虫はアオムシ、羽を立てて止まる。蛾は汚く、夜活動し、幼虫は毛虫、羽を広げて止まる」と、蝶と蛾は異なった動物として扱われている。しかし、人間の目に美しく見えない蝶もいれば、美しい蛾もいる。又、昼間に飛ぶ蛾も多く、暗くなってから活動する蝶もいる。また、幼虫がアオムシである蛾は多く、一方ヒョウモンチョウの幼虫は毛虫であるなど、結局、蝶と蛾に明確な区別はないのである。

② 蝶の口吻と複眼           

クルクルと巻いている構造体は特別に備えられた口吻で、蝶はこれを長く伸ばして蜜や樹液、果汁など水分を吸う。口吻の右上に複眼が見える。

hazah_31_1.jpg

③ 蝶の成長の過程

 蝶は完全変態をおこない、卵→幼虫→蛹→成虫という過程を辿る。幼虫が地を這い、成体が飛ぶ場合、地を這う動物として六日目に創造されたのではないかという意見もあるが、創造されたのは成体であるから、飛ぶ動物として創造されたのである。

 (二) トンボ

① 不完全変態をするトンボ

hazah_31_2.jpg

 全世界に約五千種、日本に二百種近くが分布しており、大型種のオニヤンマから、15mmほどのイトトンボまで多種多様である。卵→幼虫→成虫という不完全変態をする昆虫であり、幼虫は淡水中で生きる水生昆虫でヤゴと呼ばれ、腹腔中に鰓を持っている。

② 複眼                 

 複眼を構成する個眼は望遠鏡のような構造で、筒の中に視覚細胞が入っており、筒の先端のレンズが蜂の巣のように集合した器官である。個眼一つでは図形識別は出来ないが、複眼を構成して図形認識能力が出来る。ミツバチでは図形学習能力が備わっていることも明らかになっている。

複眼を形成する個眼数は飛翔する昆虫で多く、イエバエ二千個、トンボでは実に二万個が隙間なく、整然と並んで完全な一体の複眼として創造された。トンボの複眼の構造と機能は、言葉では言い尽くせない精巧で統率された被造物で、主の叡智の傑作中の傑作である。

 

(三) ハチとアリの社会生活

hazah_31_3.jpg

 よく知られているように、ミツバチ、スズメバチ、アリ、シロアリなどは真社会性昆虫と呼ばれ、女王とその多数の子供から成る集団生活を営む。女王は産卵専門、先に生まれた娘は働き蜂(蟻)として後から生まれてくる子どもたちの養育を担当するというように、巣の中で分業を行っている。

 蜂の群れは、写真のように六角柱が整然と並んだ巣作りをし、社会生活を営み、「社会的な」役割を各個体がつつがなく果たしているのである。これを実態が不明である「本能」という言葉で、簡単に片付けてしまって良いものだろうか? このことを成し遂げるための知恵とさえ言いたくなるほどの知識・技能を、蜂や蟻のDNAのどこに、どのように主は組み込まれたのであろうか? 人類はまだ何も知らない。

                           

(四)セミ 

 セミも不完全変態をする虫で、短命な昆虫として哀れまれるのは、幼虫として土中に長期間潜み、やっと地上に出てきたら一か月(飼育条件ではもっと短い)で死んでしまうためである。しかし、幼虫として地下生活する期間は三~十七年に達し、むしろ寿命は長いほうである。

 

(五)花の蜜を集め、授粉する蜂や蝶          

① 優れたホバリング飛翔力

蜂や蝶は美しく装われた花に誘われて群がり、蜜を集め、また花粉を体につけて別の花に運び授粉者としての機能を果たす。鳥のホバリングについて前回記事に記述した際に、動物で最高の代謝能を発揮するのは、昆虫がホバリングしている時であると書いた。

写真は蜜蜂がホバリングしている様子を示しており、極めてよく発達した筋肉を使って激しく羽ばたいて、一カ所に留まっている。大写しした写真では蝶が長い吻を延ばして蜜を吸い出している様子がよく分かる。

hazah_31_4.jpg

 ② 虫媒花に虫が応答する機構

 自然界の数々の出来事は確かに自然に推移しているように見える。確かに、全能の主がすべてを精巧に整えて創造された後は、その法則に従って秩序正しく行われているのである。授粉だけを取り上げても、「偶然に」昆虫などが蜜を産生する花に飛んできて、蜜を吸い、羽に花粉がついて、同種の他の花に授粉するのではなく、すべて主による愛の御支配の下で起こっている御業なのである(マタイ六・28-30)。

 花が無事に受粉して実が成り、次の世代が生まれるという現象だけでも、花を虫や鳥など(花粉授粉者)に魅力的に見えるように装い、蜜を出して虫を惹きつけて訪れさせ、昆虫に花粉をつけ、同種の別の花で授粉を行わせるように統括的な企画の下に創造されているからである。花の香りや色は、昆虫などを呼び寄せるための信号になっているが、昆虫の側から見れば、蜜のありかを示すものとしての意味を持つ。人間の目には単色の花びらでも、紫外線に反応するフィルムで撮影すると、花の中心に集中して向かっている腺の模様が現れるのが知られている。昆虫の眼にはその腺の模様が見え、目標がそこであることを知ると考えられる。 

 

(六) 変態:完全変態と不完全変態

 節足動物は、動物の正常な生育過程において変態(形態を変える)を行うが、変態は蝶などの行う完全変態と、セミやカマキリ等の行う不完全変態がある。

① 完全変態

チョウ、ハチ、アリ、ハエ、カブトムシなど、幼虫が成虫になる際、運動能力を著しく欠いた蛹(さなぎ)と呼ばれる形態をとり、蛹から脱皮して成虫になる。すなわち、 卵→(孵化)→幼虫→(蛹化)→蛹→(羽化)→成虫という段階を経る。

 hazah_31_5.jpg

 蛹は短い糸により体を固定し、長い糸を出して繭を作ってその中に入るものが多い。蛹の段階ではほとんど動かず、一見して休眠しているように見える。しかし、体内では食細胞の働きにより幼虫の体を構成していた諸器官が一旦分解され、備蓄されていた栄養分を用いて、成虫の体を形作る部位「成虫原基」を中心に新しく形態形成が行なわれている。  

         

② 不完全変態

 セミ、カマキリ、トンボなどは、蛹を経ず、幼虫が直接成虫に変態する。不完全変態をする種では、若虫と成虫の形態がよく似ており、若虫期に数回の脱皮を繰り返して成虫に変態することが多い。

hazah_31_6.png

 

③ 両生類の生態と変態

 両生類についても少しだけ触れておく。モーセの働きでカエルが川から這い上がり、その後、死体を山と積み上げたので臭くなったと書かれているように(出エジプト8:6ー14)、幼生は水生であるが成体は一応陸に上がる。しかし、その名の通り水を離れて生きることは出来ない。なぜなら、呼吸の大部分は皮膚呼吸に依存しており、皮膚がある程度湿っていないと生きていけないからである。口を膨らませ、空気を飲み込むような格好をして僅かに肺呼吸も行っている。

hazah_31_7.jpg

 

 [Ⅱ] 水の生きもの 

主は、海、湖、川に様々ないのちを置かれたので、水の中は賑わっている。そのうちの一端を見てみる。

 (一) タカアシガニ

 節足動物中で最大で、成体のオスでは鋏脚が脚よりも長くなり、大きなオスが鋏脚を広げると3.8mに達する。甲羅は最大で甲幅40cmになり、体重は最大で19㎏に達する。同じ甲殻類に属する他の様々なカニやエビが多数存在し、海を豊かにしている。

hazah_31_8.jpg

 (二) アメリカアオリイカ・クリオネ

様々なイカは、日本人の食卓におなじみである。その他、タコ、貝類、ナメクジ、クリオネなど同じ軟体動物が海を賑わしている。

クリオネは巻き貝の仲間であるが、成長すると完全に貝殻を失う。体は透明な部分が多く、体の前半に局在する内臓のみが不透明である。胴体の前部に透明な一対の翼足があり、翼足をヒラヒラと動かして遊泳する優雅な姿から「流氷の天使」あるいは「氷の妖精」と呼ばれる。

hazah_31_9.jpg

(三) アカウミガメ

 人間の分類学では爬虫類であるが、ウミガメは数多く存在しており、大きいものは甲長100cm、体重180kgにもなる。五月上旬~七月下旬の産卵期の夜間、ウミガメが群れをなして海岸に上がってきて、一回に100個~140個産む。

砂中に産み落とされた卵は孵化前に海水に触れると孵化しないので、満潮時でも海水が来ないような砂浜の奥まった位置で産卵する。ところが、ゴミやテトラポッドなどに阻まれて産卵場所に辿り着けなかったり、卵が自動車に轢き殺されたり、文明が自然破壊をしている一例である。

hazah_31_10.jpg

 [Ⅳ] 小さな生き物にも主の眼差しが注がれている

「生めよ。ふえよ。海の水に満ちよ。また鳥は地にふえよ。」(創世記一章・22)

二羽の雀は一アサリオンで売っているでしょう。しかし、そんな雀の一羽でも、あなたがたの父のお許しなしには地に落ちることはありません。(マタイ十章・29)