進化過程の生き物の化石と考えられているアウストラロピテクス、旧人、原人、ホモ・エレクトスやネアンデルタール人などは本当に実在したのですか? これら化石は、サルからヒトへ進化した証拠、進化のミッシングリンクなのでしょうか?

 まず、簡単に解答だけ記述します。詳しく知りたい方のためには、後半にやや詳細な情報を紹介していますので、参考にしてください。

【Ⅰ】中間型化石は存在するのか?

 何となくヒトか、サルかと思えるような化石が見つかると、いつの間にか名前が付きます。ピテカントロプス(ジャワ原人)、ホモ・エレクトス(北京原人)、アウストラロピテクス、ネアンデルタール人などなど、次々と名前が付いて、サルからヒトに進化したという前提の元に、進化図に当てはめて考える癖が付いてしまっています。

 様々な化石が発掘されて詳細な検討がなされる前に、科学者が「かも知れない」と発表したことが、マスコミによっていつの間にか「である」と断定されて社会に情報が流れていきます。そのために、例えば「三角かも知れない」と科学者が言い、「多分三角だ」となり、そして遂に「三角だ」と断定されてしまいます。後で、いや、「実は四角だったかも知れません」とまた曖昧な表現で訂正されます。そしてその情報は、歪んで、しかも時間が掛かって流されていきます。その後で、「研究が進んで、実は五角か、六角だったかも知れません」と、迷路の中をさまようことになります。こうして最終的な真実はどこにあるのか、一般の人々には知らされないままに、時が流れていってしまうのです。

 ルーシーと可愛い名前が付けられた化石は、アウストラロピテクスと命名・分類された動物で骨格の約40%が発掘され、「二足歩行をして」いた中間型の生き物であったと推測されて、立って歩いている復元像が作られました。しかし、実はボノボというピグミーチンパンジーによく似た動物(猿)であったと結論されています。同じ化石から、このように全く異なった動物が想像されることがしばしばです。

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【Ⅱ】サルとヒトとの超えられない大きな溝

 発掘された数多くの化石をよく調べると、それぞれが「サル」であるか、「ヒト」であるかのいずれかであって、中間的な生き物ではないことが判明してきています。後半に多少詳しく記載しますが、判定の基準は、脳容積、頭蓋骨の形、足と手の骨格、それと関連して二足歩行が可能であったかどうかなど、いくつかの重要な相違点が明らかになりました。そして、それぞれが、明確にどちらかに判別されてどちらかに決定されるのです。下記に、かつて中間型生き物であるとされて、おなじみの名前が付けられた化石を、「サル」であるか「ヒト」であるかを明確にして、それぞれを別の表に示します。

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chukangata_kaseki_4.jpg ピテカントロプスはジャワ原人であり、北京原人同様直立歩行していたことは明らかであり、紛れもない人です。これら原人は、あたかもサルとヒトの中間的な生き物であるかの如くに復元されていますが、上記のアウストラロピテクスの復元図で分かるように、発掘された骨格から想像力豊かに復元像、あるいは復元図を作り上げます。その結果、最終的な結論として予想される動物の姿とは似ても似つかぬ復元像が作られたのです。このように、復元像を作る人の先入観によって、想像によって作成される復元像は大幅に異なってくるのです。

 また、有名なネアンデルタール人は洞窟生活者の化石であったために、腰の歪んだ復元図が作成されましたが、完全な人であることが判明し、現在異議を唱える人はいません。 

【Ⅲ】ピルトダウン人(捏造事件)

 あからさまな捏造によってこの世にその名が知られることになったピルトダウン人について、本当のことを言うと、今更私たちが知る必要はありません。しかしながら、警告のために敢えてここに記すことにしました。Wikipediaには、「近代科学史上で最大のいかさまとして知られる、捏造された化石人類。20世紀の前半期の古人類学研究に多大な悪影響を与え、迷走させた」と、紹介されています。化石発掘の当初から疑惑はあったようですが、著名な学者の支持を得たこともあり、ピルトダウン人は現生人類の直系の祖先と認められたという悲しい歴史を辿りました。1910年頃から40年近く古人類学界を混乱させた後、1950年にやっと捏造が発覚しました。

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 考古学の分野での捏造は、なかなか発覚しにくいのですが、それでもこのように発覚して正されることもあることに希望を見出します。「近代科学史上最大のいかさま」と言われるこのピルトダウン事件に興味のある方は、この捏造がどのように行われたかが書かれている下のサイトを読んでみて下さい。

ピルトダウン人捏造の犯人。ピルトダウン人の100年のミステリー

 考古学研究家の藤村新一が起こした旧石器捏造事件は、日本考古学界最大のスキャンダルです。彼は日本の前期・中期旧石器時代の遺物や遺跡を次々に発掘しましたが、それがねつ造であることがスクープによって発覚したのは2000年11月で、覚えている人も多いでしょう。中国では、1997年に農民が鳥の上半身と恐竜の下半身を組み合わせて捏造化石を作った"恐竜版ピルトダウン人"とも言うべき捏造事件がありました。
        

 ******** 少し専門的な詳細は下記 ********

【Ⅰ】「先祖はサルのような獣」と信じさせられた人類

 「サルから順次体が大きくなり、背筋が少しずつ立ち、毛むくじゃらだった体がすべすべとした皮膚になってヒトとなった」という「ヒトの進化図」が教科書や百科事典や博物館に長期に亘って掲載あるいは展示されて、人々の頭脳にイメージがくっきりと焼き付けられてしまいました。発掘された化石に、様々な名前が付けられてサルと人類の中間型化石であるとして学校教育の場で、その片仮名の名前を覚えさせられてきました。こうして、いつの間にか「人間はサルから進化した」と証明された事実として信じられるようになり、テレビや新聞で報道・宣伝されるようになって覚えていないほど長い時間が経っています。

【Ⅱ】化石から描く復元図は想像力の産物

 発掘されている同じ化石を材料にして描かれた二つの復元図(CRJ誌31号より)を並べて示しました。左に示したイラストは、サルから順次人に進化したという、私たちに馴染みの深いイラストであり、この「復元図」が私たちの脳裡に刻み込まれ、このような進化を信じるように長年に亘って誘導してきたイラストです。そして、同じ化石から想像して最近描かれた進化図を右側に示していますが、この大きな違いに驚かれたのではないでしょうか。こんなにも異なる復元図が描かれるということは一般には余り知られていないでしょう。

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 復元図がどのように描かれるかということを、国立科学博物館の展示パネルに、以下のように説明されています。  

 よみがえる私たちの祖先
誰も見たことのない大昔の人々の姿や表情は、どのように復元されるのだろうか。どこまで復元
できるのだろうか。長年におよぶ調査で得られた化石や石器という証拠を、解剖学と考古学の知識
にもとづき比較研究することによって、身体の特徴や精神活動が推測され、さらに、想像力を加味
して復元が完成する。 -国立科学博物館 新館展示パネルより-(下線は筆者による)

 このような進化図には科学的な根拠があると人々は思い込まされていますから、新しい化石が発掘されると、進化は事実であると信じ切っている脳裡には、それ以外の可能性が思い浮かびません。そして、それがサルからヒトに進化した中間的な化石である、進化の新たな証拠であるとして、このような図に当てはめて大騒ぎをします。しかし発掘された化石は、まず、骨格の2~30%、時には10%以下の化石しか発掘されていない段階で大々的に報道されることが多いのです。そして、後になって間違っていたと解っても報道されないことも多く、また例え報道されても新聞の片隅に小さく書かれるのが関の山でしょう。

【Ⅲ】発掘されたそれぞれの化石

 「人類の化石」「中間型生き物の化石」などと分類されてきた化石が、「サルの化石」であるか「ヒトの化石」のどちらかであり、中間型の化石は存在しないことを上に記しました。それらについて、判明していることの一部について、もう少し詳しく紹介しましょう。

【Ⅲ】-1 サルであると判定される化石

1.ホモ・ハピリス
 身長は130cmと低く、不釣合いに長い腕を持っていたと思われます。脳容量は小さいものは400ccから、大きなものも600ccくらいで、人の脳容量とは大きな差が見られます。上に記した有名なアウストラロピテクス(ルーシー)と似た生き物で、サルに分類されるものでした。

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2.頑丈型猿人・パラントロプス
 進化論において猿人として分類されるグループの中には、明らかに頭蓋骨の形状が人間と異なるものがあり、頑丈型猿人と呼ばれています。下の写真にくっきりと見える頭頂部に矢状稜(しじょうりょう)という特徴的な盛り上がりを持っています。この矢状稜はゴリラなどにもあり、物を噛む筋肉のつく部分で、人間やチンパンジーなどにはこの盛り上がりはなく、頭頂部は丸い形をしています。これらパラントロプスは絶滅した類人猿であると考えられます。

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【Ⅲ】-2 人と判定される化石

1.ホモ・エレクトス(ピテカントロプス・エレクトス、ジャワ原人、北京原人)

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 ホモ・エレクトス(原人)は「直立した人」の意味で、ヨーロッパを中心に西アジア・中央アジアからも発掘されています。身長は推定約170cm、脳容積1000cc(平均)と小さく、進化論では、直立歩行していたが知的には劣るものとしてとらえられ、現生人類への進化の前段階であるとされていました。しかし、ホモ・エレクトスは中間型化石ではなく、完全な人であると判明しています。

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2.トゥルカナボーイ(原人)
chukangata_kaseki_11.jpg 1984年にケニアのトゥルカナ湖で少年原人の化石が発見され、5年間に全身骨格の60%が発掘され、トゥルカナボーイと名付けられました。身長は160㎝なのですが、歯の成長曲線から10歳位と推測され、大人になれば180㎝を越えただろうと推測されています。
細長い体型で、暑い気候でも長距離歩行できたと考えられています。脳容積は約1000ccとやや小さいのですが、現代人の個人差の範囲内に収まります。知能が劣っていたと勝手に決めつけて、博物館の復元像では服を着せていません。しかし、今では進化論の立場でも、原人はずっと人間に近かったと認めています。

3.ネアンデルタール人(古代型のホモ・サピエンス(賢い人の意味))  「旧人」として分類されていた中で代表的なものはネアンデルタール人で、化石は200体以上見つかっています。ネアンデルタール人はかなり昔から進化図の中に並べられており、人へ進化するほとんど最終に近い位置に置かれています。ヨーロッパを中心に西アジア・中央アジアからも発掘されており、身長165cm、体重100kg、脳容積は人より大きく1600cc です。身長に対して体重がかなり重く推定されているのは、現代人と比べて、より筋肉質であったと想像されているためです。

 ネアンデルタール人はヒトに進化する一歩手前の生き物として、非常に原始的なイメージで紹介されてきました。それは、関節炎とくる病で脊髄が変形した個体の化石から、人間よりサルのような特徴を持った復元像が作られたためなのです。こうして、1950年代後半まで人間とサルを結ぶミッシングリンクと考えられ、40年以上の長期間、誤った復元像が展示されてきました。現在では顔や姿形も改められ、また直立させて展示し直されています。発掘された同じ化石から様々に異なった復元像が作られているのを、ネアンデルタール人で確かめてみて下さい。

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 二人のネアンデルタール人の骨から抽出された発語と言語能力にかかわるFOXP2遺伝子の分析結果から、現生人類と同じ変異型が認められたと報告されました。この遺伝子は、脳の働きだけでなく、顔の筋肉を制御する神経とも関わっています。ネアンデルタール人が私たちのように複雑な発声ができる咽頭部や顎の構造を部分的に備えていたことや、現生人類と交雑があったというごく最近のゲノム解析研究を考え合わせると、ネアンデルタール人は実は現生人類そのものだったと考えられます。

CR誌31号、人類の起源より。参考文献 (1) Clotta,E. Science, 318: 546-547 (2007) (2) Haesler, S. et al.
    J. Neurosci., 24: 3164-3175 (2004))

4.クロマニヨン人(現代型のホモ・サピエンス)
 進化論的には人に直結する「新人」という名前が付けられている典型的な例が「クロマニヨン人」と呼ばれている化石で、ヨーロッパで多数発掘されています。平均的な体型は、身長180cm、体重75kg、脳容積1450cc(現代人の平均と同じ)で、骨格形態は現代人と区別ができない骨であり、進化論者も完全な人間、あるいは人間に直結するものと認めています。

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 クロマニヨン人が遺した様々な文明器具や文化遺産は有名で、動物の骨を精巧に加工した技術の高さは驚くべきものです。ウクライナ周辺では、マンモスの骨を住居に利用しているものもあり、中には400個にものぼるマンモスの骨を複雑に組み合わせて造られたものも発掘されており、機械なしでは現代人には到底作れない脅威の技術です。また、優れた壁画が洞窟に残されています。

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5.湊川人:日本の「新人」

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 日本の「新人」化石としては、沖縄県で保存状態の良い「港川人」が発見されました。身長は男性で約153?155cm、女性で約144cm、全体的に小柄で胴長なのに対して、腕は細めで手は大きく、下半身がしっかりとしていたとされています。また、顎ががっしりしていて、硬いものも食べていたと考えられています。かつて、縄文人の祖先と考えられましたが、研究の結果、現在の人類と見比べると、オーストラリア先住民やニューギニアの集団に近いと考え直されています。