1.「大進化」「小進化」という言葉は進化論者によって発明されたものですが、この言葉を流用することに関して、どう考えるか? この言葉の問題点はどこにあるか?

「進化」という言葉の内容が、時代と共に変化してきており、現在は非常に複雑怪奇になってきている。進化という話題になると、ダーウィンを省略して語ることは出来ないが、ここでは進化論の詳細を語る目的ではないので、簡単に一言、述べるに留める。

一般には、ダーウィンが進化を思いついたのは、ガラパゴス諸島でダーウィンフィンチの多様性から進化論のヒントを得たと言われているが、実際はそうでもなかったようである。しかしながら、その後、「進化論」も変遷を辿り、進化とは、簡単には生物が自然発生し、そのメカニズムは不明であるにしても、単細胞から順次複雑で高等な生物に「進化」し、最後に人間にまでなったという説である。

ところが、この変化の過程を考えると、生物の種類の中での大きな変化と、同じ種類の中での小さな変化を区別するべきだという考えが出てきた。そうして、種の中の小さな変化、変異を「小進化」と言い、種類まで変わる変化を「大進化」と定義しようと提唱された。

例えば、皮膚の色とか、眼の大きさとか、背が高いとか低いとかというような、人でも各種動物でも見られる様々な変異を小進化と言い、それとは別に種類が変わるようなものを大進化と定義しようとした。そして、小進化が次々と蓄積されることによって大進化に繋がっていくと考えたのである。すなわち、進化は連続した過程であり、その変化が大きいか小さいかだけの差であるという認識である。

4-50億年に亘る連続した過程の結果、単細胞が人にまで進化したという考えに繋がってしまうのである。

小進化と定義したことの中核を占める部分は、タンパク合成に関わる部分、すなわちDNA上の3%以下の部分に関することである。すなわち、現在人類が知っている遺伝学は、タンパク合成のDNA上の情報だけである。ゲノム解析は、化学構造だけは終了したが、その生物学的内容は、ほとんど不明なのである。生命の本質に関しては、遺伝学的に全く分かっていない。

この変化は、変異であって、変異のメカニズムに関しては、順次解明されつつある。
しかし、全く異質の、生物の種類を決定する遺伝的な情報に関しては、タンパク合成の情報とは、ある意味で無縁の情報なのであり、断絶した情報である。

生物の種類を決定する遺伝的な情報は、DNAとそれを包むヒストンタンパクなどが一体となった染色体に秘められているのであろうと、現在人類は推測しているが、それを解明するためには、まだ、全く道筋さえ示されてはいない。

このようなことから、「変異」と、いわゆる「進化」とをあたかも大小の差に過ぎないかのごとき迷路に踏み込ませる言葉は、厳に避けなければならない重要な一線である。