2 大地に根を下ろした植物

 神は言われた。「地は草を芽生えさせよ。種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける果樹を、地に芽生えさせよ。」そのようになった。地は草を芽生えさせ、それぞれの種を持つ草と、それぞれの種を持つ実をつける木を芽生えさせた。神はこれを見て、良しとされた。夕べがあり、朝があった。第三の日である。(創世記1章11~13節、新共同訳)

[Ⅰ]序
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 前項において、①地球は一つの海と一つの陸地に分けられたこと、②現在の地球の陸地と海がどのようになっているか、③土の成分について、④海水の成分について、⑤お造りになった海と陸を主が「よし」とされたことを学んだ。さらに専門的な考察として、⑥地球上の水の循環について、⑦海水の成分についてさらに専門的に、⑧ロトの妻の出来事(創19章17,26節)から学ぶこと、⑨水について、⑩土の成分、元素についての専門的な情報などを学んだ。

 主が極めて秩序正しく、順を追って創造の御業を進められたことを、こうして詳細に学ぶことによって、創造の一切をより感謝を以て知ることが出来るだろう。このように整えられた陸地に、植物を生えさせられたのである。

[Ⅱ]陸地に植物を生えさせられた
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(1)花・実・種を付け成熟した状態で

 温暖で適切な湿度を持った大気に包まれた地球に、静かな水の循環と肥沃な大地を整えた後、創造主は陸地に種を生じる草木、実を結ぶ果樹、植物を生えさせられた。植物はすべて、花を咲かせ、実を実らせている、成熟した状態で創造されたのである。創造の後の段階でいのちあるものを地上に創造し、栄えさせるために、いのちあるものの食物として備えられたのである。

(2)いのちあるものの食物

 緑の草木は、無機物である炭酸ガスと水からブドウ糖と酸素を合成する機能を主から与えられた唯一のものである。つまり、光のエネルギーをブドウ糖という有機エネルギーの形に変換する機能を授けられ、いのちあるものを養う役割を与えられたのである。

「神は仰せられた。『見よ。わたしは、全地の上にあって、種を持つすべての草と、種を持って実を結ぶすべての木をあなたがたに与える。それがあなたがたの食物となる。地のすべての獣、空のすべての鳥、地をはうすべてのもので、いのちの息のあるもののために、食物として、すべての緑の草を与える。』そのようになった。」(創1章29~30節 )

daichi_shokubutsu_3.jpg さて、「植物は生物ではないのか」という疑問を持たれる方も多いかも知れない。草や果樹など植物は、タンパク質や脂質などからできている細胞が構成単位となっていること、そしてDNAを通して伝達される情報にしたがって再生産することができるなど、物質的に、また生物学的に生命体として認識されている。しかし、聖書の定義で「生きている」とは、血と肉を持ち、いのちの息を与えられたものを指すのである。植物は「生きているもの」の中には含まれていない。いのちの息のあるもの、すなわち動物の食物として備えられたのである。

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(3)種類にしたがって

 最初に上げた新共同訳では「種類にしたがって」という言葉は、訳出されていない。この翻訳では、野の獣、家畜の創造の記述(創1章24,25節)においても、この言葉は訳出されていない。新改訳では、植物の創造の項に於いて、下記のように3回「種類にしたがって」と翻訳されている。

「地が植物、すなわち種を生じる草やその中に種がある実を結ぶ果樹を、種類にしたがって、地の上に芽ばえさせよ。」そのようになった。地は植物、すなわち種を生じる草を、種類にしたがって、またその中に種がある実を結ぶ木を、種類にしたがって生じさせた。(創世記1章11~12節、新改訳)

 口語訳や、また各種英語訳(NIV KJV,NKJV)においても、「種類にしたがって」は訳出されている。植物はいのちを与えられなかったが、その基本単位は細胞であり、その細胞の性質は遺伝物質、DNAの情報にしたがって増えていくという基本的な機構が組み込まれたのである。

「種類にしたがって」という主からの重要なメッセージに関しては、野の獣・家畜の創造の項(創1章24~25節)で詳細に学ぶことにする。

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✽ 専門的な考察 ✽

[Ⅲ]細胞
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 植物細胞については、次項で詳細に学ぶことにするが、ここでも多少紹介しておこう。イラストに示すように、動物細胞とは異なり、植物細胞は繊維素で出来ている堅い細胞壁に囲まれているので、がっしりとした角張った形をしている。この細胞壁が植物から得られる繊維の素なのである。

 植物を構成する基本単位は細胞であり、基本的な構成成分、構造、そして機能は動物と変わらない。細胞の内容物は水溶媒に浮遊、あるいはタンパク質や脂質、デンプンが溶け込んで存在している。中に浮遊している細胞内小器官は、それぞれ異なった特別な機能を担っている。核は通常1つであり、細胞の機能的な中心であり、この中に細胞の性質を担っているDNAが存在している。ミトコンドリアは細胞のエネルギーを担っており、数百個以上存在している。葉緑体は緑色植物の細胞内に多数含まれており、名前の通り葉緑素を含んでおり重要な役割を果たしている。すなわち、植物が光のエネルギーをデンプンに変換するという大切な機能と同時に、酸素を合成する機能を担っている。すなわち緑色植物は、動物の食物としても、また呼吸を支える機能に於いても、必須の存在である。緑色植物のこの働きなくしては、動物のいのちは存在し得ない。

 細胞の中でひときわ大きな容量を占めている部分は、植物に特徴的な液胞で様々なものを溶け込ませており、細胞によっては細胞内いっぱいに広がっていることもある。植物が大量に水を含んでいることは誰でも知っているだろうが、その水を蓄えているのが液胞である。

[Ⅳ]主の創造の順序

 創造の第三日目に早々と植物が創造されることに戸惑いを覚えたことがないだろうか?三日目に創造される植物は、いわゆる高等植物とされる花を付ける草木や、果物を実らせる果樹や大きな樹木など、これらすべてである。進化論的視点で自然界を見ることに馴染んでいる目には、主の創造も進化論的順序で行われたと暗黙の内に思索の中に入ってきている。

 したがって、まず太陽や月や星が先ではないか、そして、その次にはシダ植物やコケなど下等植物、又動物もクラゲや諸々の下等動物、そして蜘蛛など、またハエやトンボなどの昆虫が先だろうと思う。そしてその後に高等植物である花や樹木が創造されたならすんなりと頭の中に収まる。すなわち全て進化論的発想法である。

 ところが、主の創造においては大地が出来た時点で、その大地に植物を備えられたのである.主の視点では、下等植物、高等植物という分類はないと思われる.全て、いのちのない「生物」をこの時点でお造りになり、その後に創造なさるもののために備えられたのである。

 この時点では、太陽も月も星も存在していないが、最初にお造りになった光はあった。そして地球は自転しており、光に照らされるところが昼、光が届かない部分は夜であったが、昼と夜を分けたのは、この時点では太陽でも月でもなかったのである。

 地球の表面には豊かな水を湛えた海が広がっていた。海はどれ位のミネラルを含んでいたかは不明であるが、水の中に棲息する植物も置かれただろうし、第5日には海に生きる動物を創造なさったのであるから、進化論者が主張しているような「何も溶けていないH2Oという純粋の水」であったとは考えられない。最適な条件でミネラルなどが溶け込んでいる海水をお造りになったと思われる。

 創造された時の大地の面積がどれ位であったかは不明であるが、その大地については前項で考察したように、植物を豊かに繁茂させることの出来る肥沃な大地であったのである。そして、植物が創造される前に、地上にはすでにゆったりとした水の循環があったと書かれている(創2章5~6節)。さらに、エデンから流れ出た川が分かれて、4つの川に水を注ぎ込んでいた(創2章10~14節)。
 こうして豊かな栄養に富み、水が供給され、昼は光が射す大地に、色々の植物を生えさせられて、創造の次の段階への備えが終了したのである。