9.主が定められた自然法則と秩序

イザヤ書四十五章十八節、二十一節 b
天を創造した方、すなわち神、地を形造り、これを仕上げた方、すなわちこれを堅く立てた方、これを茫漠としたものに創造せず、人の住みかにこれを形造った方、まことに、この【主】がこう仰せられる。「わたしが【主】である。ほかにはいない。...わたしのほかに神はいない。正義の神、救い主、わたしをおいてほかにはいない。」

時を定め、天と地の全法則を定め、統括しておられる主

 主は物質を構成する諸元素を造り、光を造り、地と海を分かち、地には植物を実らせ、そして太陽・月・星を完成して物質の準備を完了なさった。第四日に創造された天体は、正確に時を刻む重要な働きを担っており、時が正確に刻まれなかったら、地球上は大混乱に陥るだろうことは誰にでも容易に推測できるだろう。

神は仰せられた。「光る物が天の大空にあって、昼と夜とを区別せよ。しるしのため、季節のため、日のため、年のためにあれ。(創世記一章一四節)

「もしわたしが昼と夜とに契約を結ばず、天と地との諸法則をわたしが定めなかったのなら」(エレミヤ書三三章二五節)

 諸法則を主が定められなかったら、今の地球や私たち人類はいなかったであろうことを、エレミヤは二十六節に書いている。天体の運行を定めたということは、地上の生物の生存まで含め、地球全体のすべてを秩序正しく設定されたということである。

hazh_9_1.jpg 前号に書いたように太陽・地球・月の相互の距離、位置、質量の絶妙な比率に造られ維持されており、地球が太陽の周りを一回公転する時間を一年、月が地球の周りを一回回る時間を一月、地球が一回自転する時間を一日と定められた。そして、地球の自転軸と公転軸の傾斜により、季節が出来たのである。地球が今より一%太陽から遠いだけで、地球は氷の星になっており、逆に今より五%太陽に近かったら灼熱の星になってしまうだろう。太陽と地球の位置関係は、このように絶妙なバランスを保っており、それによって豊かな水に支えられた美しい地球が成り立っているのである。この地球と太陽、そして月のバランスは非常に緻密な企画によって創造されており、進化論で主張されているような偶然に寄り掛かって出来る確率は無限にゼロに近い。

地球を人の住みかに整えるために:特別仕様の月

hazh_9_2.jpg 美しい月の姿は人々の詩心を呼び覚まして多くの美しい詩が生まれ、同時にそれをお造りになった創造主を慕わしく思い、礼拝した。時代を経て、人類は宇宙に飛び出して外から地球を眺め、青く美しい唯一の水の惑星を人の住みかとしてお造りになった主を改めて賛美することとなった。

主をほめたたえよ。日よ。月よ。主をほめたたえよ。すべての輝く星よ。(詩篇一四八篇三節)

しかし、太陽系の他の惑星の衛星に比べて、遙かに巨大な衛星・月を地球に主が与えられたのは、人の目を楽しませることを第一義の目的とされたのではないことは明らかである。そのことを主は聖書の中で私たちに教えておられる。時を正しく刻み、季節を与えるためでもあり、海をかき立て波を騒がせることにも、月に大きな影響力を持たせられたことを、人類は今の時代になって学んでいる。

主は太陽を与えて昼間の光とし、月と星を定めて夜の光とし、海をかき立てて波を騒がせる方、その名は万軍の【主】。(エレミヤ書三一章三五節)

hazh_9_3.jpg 重力は、地球と月、両方の質量に比例し、両者間の距離の自乗に反比例する。すなわち質量が大きいと重力も大きく、両者が近いと重力は大きく、遠ざかれば重力は小さくなるという常識的なことである。また重力による起潮力は、距離の三乗に反比例する、すなわち近ければ干満が起きる力は大きく、遠くなると小さくなり、これも常識で理解出来るだろう(潮の干満は主に月の重力で起こるが、太陽の重力も五十%弱の影響を与えている)。
 潮の干満により海に潮流が出来て流れ続けて海水が澱むのを防ぎ、海岸線や海全体が清浄に保たれる。また海面は上下運動をして海水中に酸素を均一に溶かし込む役割を果たし、魚などの生存を可能にしている。このように地球と月の距離、質量比、相互の距離もまた微妙なバランスの下に創造され、維持されているのである。もし、月が非常に小さかったら、あるいはもし月が非常に遠方であったなら、潮の干満は微々たるものになっただろうから、海は汚れ、酸素も溶け込まず魚は住めなかっただろう。月が今より二十七%近いかあるいは遠いと、現状維持は不可能であると推測されている。

主は季節のために月を造られました。太陽はその沈む所を知っています。あなたがやみを定められると、夜になります。夜には、あらゆる森の獣が動きます。(詩一〇四篇一九、二〇節)

地上の生命を護る大気

hazh_9_4.jpg 地球は適正な重力を持って創造され、二日目に創造された大気は重力により宇宙の彼方へ飛び散らないで、地球をすっぽりと覆って護っている。そして、①人が生きるための最適な大気圧、及び②窒素・酸素・炭酸ガス等の大気を構成する気体の相互の比率が維持されるように、諸々の物理法則が主によって設定された。

 現在の大気の構成比率を図に示す。大気中で最も多いのは無毒・無臭で反応性を持たない窒素ガスで、私たちの周囲に存在している気体の八十%近くはこの不活性ガスである。また、スーパーで売られているカツオ節の袋に封入され膨らませているのは空気ではなく純粋の窒素ガスである。カツオ節は空気中に放置すると酸素によって短時間で香気を失い、味が悪くなるが、窒素充填しておくと風味が保たれる。スーパーに行った時にカツオ節の袋に「不活性ガス充填」と印刷されているのを確認することをお薦めする。
hazh_9_5.jpg 動物の呼吸に必要な酸素は空気中に約二十一%存在しており、酸素が不足すれば生命が維持できないことは誰でも知っている。高い山に登ったり、スクーパーダイビング(写真)をしたりする時、酸素ボンベを使うのは、酸素濃度が低いと短時間で死んでしまうからである。しかし、酸素圧が高ければ良いというわけではない。通常よりも高い気圧の酸素を肺が吸い込んだ時には、呼吸器・筋肉・眼などに重篤な酸素中毒症を起こし、生命の危険さえある。
 地球温暖化の元凶であるかの如く鳴り物入りで誤った宣伝をされている炭酸ガスは、実は〇・〇三%に過ぎない(このことについてはこのシリーズでは書けないので、別の機会に検討する)。

 このように、それぞれの気体の許容できる比率は狭い範囲に限られていることが理解出来るだろう。したがって、創造された時の大気の構成比率は不明ではあるが、現在と大幅には異なっていなかっただろうと考えられる。地球、地上の植物、動物そして人を護るために、大気の構成比率は最高のバランスに整えて創造されたのである。

血の通ういのちのあるもの

 エネルギーを創造し、光を造り、大気を整え、地と海を分かち、地には植物を繁茂させ、そして太陽・月・星を最高の秩序を以て地球の周りに置き、主は創造の工程を順序正しく進められて、地上に血の通ういのちを住まわせる準備を四日目に完了なさった。

 人間の営みである生物学では、植物も動物も同じ「生物」という分類でひとまとめにしている。そのような進化論の思想にどっぷりと全身浸かってアップアップしている人類は、その理解で聖書の創造を読むので「ハテナ?」と戸惑いを覚える。植物は三日目にすでに創造されているのだから、生物の創造は三日目ではないのか? と。しかし、主は植物と動物との間に超えられない厳密な一線を置いておられるのである。三日目に植物を創造し、四 日目には天体を創造して、いのちを創造するために敢えて一日を隔てて準備を終えられたのである。

hazh_9_6.jpg 主が初めに九十二種類の元素(注参照)を創造なさって物質の世界を造り上げられたように、自己複製機能を担う核やエネルギー機能を司るミトコンドリアなど必要な細胞内小器官を備えた細胞を基本単位として植物を、そして同じ基本単位を用いていのちのある動物を創造なさったのである(図)。細胞学の詳細は省略するが、植物細胞は繊維質からなる硬い細胞壁で囲まれており、内側に液胞を持ち、緑色植物は光のエネルギーをデンプンに変換する重要な光合成反応を行う工場、葉緑体を持っている。(注:現在数多くの人工元素、放射能を持つ同位元素などが存在しているが、これらは創造主の作品ではない。このことについては別の記事や講演、筆者のサイトなどを参照されたい)。

 なぜなら、肉のいのちは血の中にあるからである。わたしはあなたがたのいのちを祭壇の上で贖うために、これをあなたがたに与えた。いのちとして贖いをするのは血である。(レビ記一七章一一節)

hazh_9_7.jpg 植物と動物との「生物学的」類似点や相違点の詳細は生物学の学習に委ねるとして、主が御定めになった法則は、植物は生きたものではなく、「いのち」は「血の中に」あると教えている。人の場合、模式図に示したように心臓によって一分間に五リットルの血液が動脈を通して全身に送り出され、酸素と栄養・いのちのエネルギーを供給している。全身の活動の結果生じる炭酸ガスと老廃物は、静脈によって回収される。まさにいのちの源である心臓は、当人の意志如何に関わらず、死ぬまで決して止まらず、一日に十万回拍動し続け、地球を二回り半する長さ、十万キロメートルの血管を血液が隈無く駆け巡るのである。

 主の創造のすべての目的は、この創造の順序や秩序をほんの少し見つめただけで明らかである。このようにして豊かないのちを地上に置いて憩わせ、繁栄させて、ご自身の御姿を映して人を創造するために準備万端を整えられたのである。

詩篇 一〇四篇二十四~二十五節
主よ、御業はいかにおびただしいことか。あなたはすべてを知恵によって成し遂げられた。地はお造りになったものに満ちている。同じように、海も大きく豊かで、その中を動きまわる大小の生き物は数知れない。(新共同訳)

 


このシリーズは、マルコーシュ・パブリケーションの発行するキリスト教月刊誌「ハーザー」で2014年2月から連載した内容を転載したものです